Q
抜きクリアランスを大きくすると、切り口面の悪化と抜き反り(湾曲)が大きくなるが、加工力は低下する?
A
その通りです。
解説:
せん断加工では適正クリアランスのときが、加工力(せん断抵抗)が最も小さくなるように感じますが、実際にはクリアランスの増加と共に減少します。これは板厚や材質に関係なく同じ傾向を示します。クリアランスが20〜30%になってもこの傾向は続きます。加工力だけを考えた時にはクリアランスを大きくすることは有効です。
実際には切り口面は【図1】に示すような断面となっており、クリアランスの増加とともに、だれと破断面の傾きが大きくなり、せん断面は減少し、抜き品質としては状態が悪くなります。同時に、ブランク抜きのような打ち抜き加工では、【図2】に示すような湾曲がクリアランスの大きさに比例して大きくなり、平面度も悪くなります。このようなことから通常では適正クリアランスを用いて加工をします。
適正クリアランスは抜き加工品質に問題がなく、パンチ・ダイの寿命が長くなる加工条件となっているものです。
せん断抵抗はクリアランスの増加で減少しますが、ストリッパやパッドで材料を押さえるといった材料拘束を高めると増加します。せん断速度を速くしてもせん断抵抗は増加します。切れ刃の状態ではシャープなエッジではせん断抵抗は小さくなり、切れ刃に丸みがつくと増加します。潤滑によっても低下します。
加工力はせん断抵抗と大きな関係を持っていますが、条件によって変動しているものと理解するとよいでしょう。