V曲げ加工ではダイ側の2点で支えられて曲げられますが、このときにダイの面からダイの底(Vの底)までの深さが深いと、曲げ過程が長くなり、曲げがばらついて安定しなくなります。逆に浅いとキズが発生したりうまく曲がらないなどの問題が発生します。
このようなことがなく、比較的安定した状態が得られるV曲げダイの標準寸法が【図1】です。このときにパンチの幅はダイ肩幅とほぼ同じにします。パンチ幅が狭い、広い状態になると【図2】のような形状に製品は変形します。
V曲げ加工ではパンチで材料を強く突くことができます。突き過ぎると材料は潰れ曲げの領域から外れてしまいます。したがって、この加工では材料にパンチが軽く当たる程度で止めます。この状態で製品を型より取り出すと、製品はダイの角度(製品曲げ角度=ダイ角度)より開いた状態になることが多いです。
このような現象をスプリングバックと呼びます。V曲げ型ではダイの角度に対してパンチ角度を少し小さくします。その角度は軟鋼板で2〜3度です(パンチの角度は87〜88度)。
ダイに対してパンチ角度を小さくした状態で曲げ完了時に材料を突き過ぎると、金型から離れた製品はダイの角度より閉じて狭くなることがあります。
このことからわかるように、V曲げ加工では、下死点での材料の突き方で曲げ角度が変動します。角度の調整がしやすくてよいという反面、下死点変動の大きなプレス機械で加工すると、寸法がばらつくことになる欠点もあります。