市販されている炭素鋼の主要成分は、鉄(Fe)と炭素(C)ですが、鉄鉱石からの精錬の過程で不純物として硫黄(S)0.03%程度、リン(P)0.01%、珪素(Si)0.05%含んでいるのが一般的です。
炭素鋼は、炭素含有量によってその組織が変化することがわかっています。室温(20℃前後)では、炭素鋼は通常は純鉄(Fe)とセメンタイト(cementite,Fe3C)という結晶組織を形成しています。炭素鋼は常温では金属結晶という組織を形成しています。旋盤やフライス盤で炭素鋼を切削加工する際に発生する切り屑(切り粉)の組織もこの組織をしているということになります。
炭素の含有量が多くなるほど、セメンタイトの量が増えて行きます。セメンタイトの量が増えると硬さが増して行きます。
ここで、セメンタイトとフェライトの存在のしかたですが、通常は、交互に縞模様となって指の指紋のような形状で存在しています。このフェライトとセメンタイトで形成された縞模様組織をパーライト(Pearlite)と呼んでいます。この呼び名は、真珠(Pearl)のように輝いて見えるところから来ていると言われています。
最初の話しに戻りますと、つまり炭素鋼は、室温ではパーライト組織で存在しているということになります。本当かどうかを確認するためには、炭素鋼をよく磨いてから薄い酸で腐食させて、200倍ぐらいの倍率で顕微鏡で観察してみるとパーライトの縞模様を観ることができると思います。
炭素量が0.8%の炭素鋼のことを特に「共析鋼」と呼んでいます。炭素量が0.8%未満の場合には「亜共析鋼」、0.8%~2%の場合には「過共析鋼」と呼んでいます。
亜共析鋼も過共析鋼も、室温から温度を上げていき、770℃(A2変態点)までは強い磁性を帯びています。炭素含有量の差によってはA2変態点の温度はほとんど変わりません。
共析鋼をさらに温度を上げていくと、723℃(A1変態点)以上でパーライトからオーステナイトという組織に変わります。
オーステナイトから徐々に冷却してきた場合には、723℃でパーライトに変化を始めます。炭素鋼を温度を上げ下げ下場合には、急冷却しなければパーライトとオーステナイトを言ったり来たりするということになります。
急冷却してしまった場合には話は違ってきます。