焼入れの質量効果(Mass Effect)と材料選定
質量効果とは、材料の質量差によって焼入れ硬さに変化が生じることです(【図1】参照)。内部と外部に熱処理効果に差が生じる現象でもあります。ある厚さを持つ構造材で強度を大きくしたい場合は、炭素鋼を選定せずに合金鋼を選定し、焼入れの質量効果による悪影響を避ける場合があります。【表1】は機械構造用炭素鋼と合金鋼の質量効果の比較です。
水冷の場合、機械構造用炭素鋼S55Cを選定すると、焼入れ効果は42mm厚さが限界ですが、ニッケルクロム鋼では60mm厚さまで、クロムモリブデン鋼は80mmまで焼入れ効果が入ります。素材の材料費を安くするために、炭素鋼で厚さに余裕を持たせる設計の考えもあります。ただし、焼入れ素材が大きくなると、急冷後に材料に大きな変形を生じたり、焼割れの危険性を伴なうために合金鋼を選ぶ考えもあります。
【表1】材料の種類と質量効果の違い
質量効果、直径(mm)
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※ | 日刊工業新聞社、機械材料の選び方・使い方、より |