軽量化指向に対応するための薄板搬送機構の設計を解説する。ガラス基板の搬送機構は、ローラ搬送(図1)とウォーキングビーム搬送(図2)の2つが主に利用されるが、ここではローラ搬送機構を対象としている。
1)機械設計の差別化のポイント(原理原則の追究)
搬送機構はその機能が高い汎用性を持つため、どの搬送機もほとんど似た構造に収斂されてくる。しかし、より一層の高機能化が必要となった時に、原理原則を理解し設計に盛り込んだ機械は、そのまま使用可能か多少の改良程度で対応が可能となる。この早い対応力を潜在的に持った機械は、短納期が求められる製品開発競争を支える重要な差別化力となる。
2)ガラス基板の薄板軽量化による搬送の問題
- ガラス基板は薄くなるに従い、図3のように自重によるたわみ量が急激に増大する。
- この図から、板厚0.7mm以下のガラス基板では搬送の保持スパンが450mmを超える基板は、2点保持方式では搬送不可能と判断できる。
- また、搬送時のトラブルでガラス基板のカケや割れが生じやすくなる。
- 薄板軽量化により、生産ラインでは次のような搬送の問題が顕在化してくる。
- 基板は板ガラス製造プロセスで生じた残留応力が残った状態で生産ラインに投入されるが、生産プロセス(接着、印刷、熱処理など)での熱の影響で残留応力状態が変化し、初期の基板形状に複雑なうねりが生じる。
- 板を支える複数個の搬送ローラにかかる自重に応じて摩擦力が生じて基板が搬送されるが、基板変形のためそれぞれのローラ接触点で摩擦力のバラツキが大きくなる。両端の搬送ローラでの摩擦力が等しくない状態では曲がって進む
- 洗浄プロセスでは基板は濡れた状態で搬送されるため乾いた基板よりも摩擦係数が小さくなる。その結果、洗浄プロセスでは搬送力が小さくなり搬送速度の差から基板が重なるなどの搬送不良が増加する。
以上の薄板軽量化による搬送の問題を機構設計者は解決しなければならない。