ここでは、リニアガイドよりも格段に高精度な、直動案内の先端技術の概要を紹介します。
携帯電話の液晶表示モニタやPC用ディスプレイなど、高精細画像を表示させる商品のキー部品は、サブミクロンオーダ(例えば0.3μm以下)の公差精度が要求されます。このようなキー部品の多くは、超精密金型を製作して量産されます。この超精密金型の加工には、サブミクロンオーダの精度を実現させる超精密加工機が使用されます。
超精密加工機の代表的な直動案内
超精密加工機の直動案内の構造は、次の2種類に分類できます。
a)接触式しゅう動案内・・・・レールと可動体は接触して動く
b)非接触式しゅう動案内・・・レールと可動体は非接触状態で動く
b)非接触式しゅう動案内・・・レールと可動体は非接触状態で動く
(a)接触式しゅう動案内について
- 【写真1】は、超精密加工機に採用されている代表的な接触式しゅう動案内の構造です。熟練工の手仕上げによるきさげ作業(【写真2】)で仕上げられたV溝形状のしゅう動案内に超精密級のコロ軸受を配置しています。
- きさげで仕上げられたV溝案内にコロ軸受と上部可動体を設置し、計測器で精度測定をして誤差を縮小させてゆく作業を繰り返します。
- この直動案内はボールねじで駆動させますが、ボールねじのたわみが生じる上下左右方向への誤差を回避するため、ボールねじナット部は、平行バネで保持し直動方向の推力のみを伝達させる構造としています。
(b)非接触式しゅう動案内について
- 【写真3】は、精密定盤に採用されるグラナイト石材を構造材に採用した、空気軸受の外観写真です。
- グラナイト石材は天然素材のため経年変化が無視できること、熱変形に鈍感、振動を吸収する特性などから選定されています。
- 空気軸受の作用は6μm程度の隙間にエアーを放出し、その空気圧により非接触状態で超精密直動案内を構成します。
- 直動案内レールは凸形状のブロックで、これも最終精度は手仕上げによるポリシング加工。
- 可動部のエアーパッド設計は、エアー剛性や共振回避のため重要です(【写真4】)。
- 【写真3】の銀色の直方体はリニアモータです。
- 空気軸受とリニアモータの採用により完全非接触しゅう動案内を構成。
このような超精密駆動制御の世界では、周囲温度の安定制御(例えば±0.1℃)、外部振動の完全遮断のための独立基礎構造、ダストフリーなどの環境制御が求められます。