(1)洗浄の原理
洗浄は家庭での食器などでも分かるように、スポンジに洗剤を少量つけて拭き洗いすれば、簡単に落ちる汚れと、水や湯にしばらく漬けておいても、なかなか落ちない汚れもあります。どのような原理で洗浄が行われるか、そのメカニズムを考えてみしょう。
(1) | 表面の汚れより大きな親和性のある界面活性剤の作用によって汚れを置換し、表面から浮き上がらせる。 | |
(2) | 拭き取り、ブラッシング等の機械的除去作業によって、汚れを除去する。 | |
(3) | 石油系、塩化炭化水素系、アルコール等の有機溶剤によって溶解除去する。水溶性のものは、水で溶かして除去する。 | |
(4) | 酸やアルカリなどの化学反応により、水に可溶性の物質に変えて除去する。 | |
(5) | 上記の方法を、汚れの状態に応じて組み合わせる。 |
ここで大切なことは、洗浄作業の最終目標を決めておくことです。表面の清浄化のために、最良で最も経済的な洗浄方法を選択する必要があります。次の工程に有害な影響を及ぼさない程度の清浄度は、どの程度までの汚れが許されるかを知っておくことが必要です。
(2)洗浄剤による方法
最も一般的な洗浄方法で、家庭の食器洗浄の場合と同様です。ただ異なる点は、工業洗浄では、洗浄の効率と能率を高めるために、洗浄液の温度を高め反応を促進させること、拭き洗いを省略して省力化するために、脱脂液を流動させる、ワークを動揺する、超音波を使用して脱脂液を攪拌するなどの対策がとられています。
一般に、洗浄剤といわれているものは、次のようなものです。これらが単独または複合して使用されています。
(1) | アルカリ塩・・・苛性ソーダ、炭酸ソーダ、燐酸ソーダなど | |
(2) | 界面活性剤・・・カチオン・アニオン・ノニオン界面活性剤 | |
(3) | アルカリ性クリーナー・・・市販品脱脂剤(アルカリ塩と界面活性剤の組み合わせ) | |
(4) | 乳化洗浄剤・・・石油系溶剤、アルカリ水と界面活性剤の組み合わせ(エマルジョン脱脂など) |
【表1】に、一般に煮沸脱脂浴、アルカリ脱脂浴などといわれてよく使われている脱脂浴の一例を示します。50〜60℃に加熱して使用されます。
【表1】脱脂浴組成の一例(g/ℓ)
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※ | 注)g/ℓとは脱脂液1リットル中に溶解するグラム数 |