抜き加工で、かす上がりとかす詰まりは裏表のトラブルといえます。かす上がりによって製品に打コンを作るのも問題ですが、抜きかすがダイに詰まると、【図1】に示したようなイメージとなります。
抜きかすは、頭の中では金型を通過すると、ひとつ一つバラバラになり落下するように思いますが、現実には抜き加工に使用した油やバリで付いて棒状になり、適当な長さで落下します。このときにかすが通過する穴の形状によっては、連結したかすが穴に斜めになって引っかかり、止まり、そこに次に落ちてきたかすが溜まり、詰まります。最悪、金型を壊します。外から見えないために金型が壊れて、かす詰まりに気づくことも多いです。
かす詰まりの多くはダイが摩耗してバリが大きくなり、正常でない抜け方をしているのに無理に仕事をして、かすを詰まらせることが最も多いように思います。このようなことは論外として、原因と対策を考えてみます。【図2】を参照して下さい。
抜きダイの刃先部分を長くすると、メンテナンスで再研磨しても金型が長く使えるようになると考える人がいます。このような金型では、かすがダイを通過していくときにダイの側面とこすれて焼き付き現象を起こして、かす詰まりを起こします。この部分の長さは短い方がよく、2〜3枚のかすが溜まる程度を目安とします。
ダイ穴径(d)に対して、その下の逃がし穴径がdの2倍程度の穴のとき、かす詰まりしやすいと言われています。対策としては、dとの差が小さい穴とするか、穴の断面をテーパーまたは階段状にすると効果があります。極端にかすの通過する穴を大きくする方法もあります。
かすが通過する穴の側面はザラザラ面より、きれいな面がよいのは当然です。
かすを吸い出す方法もあります。掃除機を使っているのもよく見受けます。かす落とし穴に、斜めに穴をあけ、そこからエアーを吹くことで吸引させる方法もあります。この方法はかす上がり対策としても有効なものです。斜めにあける穴は、できるだけ立てて、小さい径であけるのがコツです。エアーの圧力ではなく、エアーの流れるスピードを早くすると吸引力が増すからです。
思わぬ原因もあります。その例のひとつが【図3】です。
図のようなダイプレート、バッキングプレートおよびダイホルダで構成されている部分にダウエルピン(ノックピン)を入れるとき、バッキングプレートの穴は少し大きなドリル穴とすることが多いはずです。このドリル穴がダウエルピンに対してずれたとき、抜き部分のかす落とし穴が図のようになると、かす詰まりを起こします。このようなことが原因だと、なかなか発見できずに対策が長引くことがあります。ご注意下さい。