水系の湿式金属洗浄においては、界面活性剤の存在なしではその効果は期待できません。酸洗い浴、アルカリ脱脂浴、活性化浴などに少量添加された界面活性剤は、金属表面に生成・付着した汚れに対して、浸透、吸着、乳化、懸濁、分散、発泡、表面張力低下などの作用をして洗浄効果を高めています。
つまり界面活性剤は、酸のように酸化皮膜を溶解したり、有機溶剤のように油脂を溶解除去する主役ではありませんが、それらの主反応が起き易い状態を作り出す黒子の役をしている訳です。
(1)界面活性剤の種類
(1)アニオン界面活性剤
石鹸が代表的なものですが、アルキルベンゼンスルフォン酸塩などの合成洗剤が用いられています。Na塩は、水溶液中では、アルキルベンゼンスルフォン酸がアニオン(マイナスイオン)に、Naがカチオン(プラスイオン)に電離して強い洗浄力を発揮します。
(2)カチオン界面活性剤
水中でカチオンになるもので、第一、第二、第三アミン塩系があります。
(3)非イオン界面活性剤
水中でイオンに解離しないタイプの界面活性剤であるが、ノニフェノール系のものだけが工業用洗剤として使用されます。洗浄力はアニオン系に順じ、酸性溶液中でも洗浄力が低下しないことが特徴です。
(2)界面活性剤の性質
(1)HLB
界面活性剤は、その構造中に親油基(油と結合し易い反応基)と親水基(水と反応し易い反応基)を持っています。この両者のバランスを示す指標がHLBです。HLBとその作用を【図1】に示します。
これは、親油性の最も強い活性剤をHLBゼロ、親水性の最も強い活性剤をHLB20として、すべての界面活性剤をこの間に当てはめたもので、それぞれの性質を現したものです。
HLB5以下のものは水に溶解せず、乳化分散します。HLB10以上になると、水に透明に溶解しますが、活性剤の多くは分子状に溶解しているのではなく、分子の集合体であるミセルを形成して水中に溶存しています。
図中O/W型とは、水の中に油が分散しているタイプで、代表的なものは牛乳(水の中に牛脂が分散している)です。W/O型は、油中に水が分散しているものでバターやマーガリンがこれに相当します。