金型部品の内部に大きな応力が発生して、その部品が2つまたはそれ以上に分離してしまうことを破断(rupture)と呼びます。金属材料の場合、破断に至るまでは塑性変形を生じながら、同時進行で亀裂(crack)を発生させていく場合がほとんどです(注:焼き入れをしてマルテンサイト組織となっている場合には、脆性破壊を起こすことがありますので、金属材料は全て延性材料であると断定することはできません)
一般的には亀裂が進行して破断を招く現象を破壊(fracture)と呼びます。また、破壊に至らなくてもある大きさの変形を生ずれば目的に応じた機能を果さなくなる場合があり、これは破損(failure)と呼んでいます。
引張強度試験などでは一軸方向の力による破壊強度等を試験評価しますが、実際のプラスチック成形金型部品では、2軸方向または3軸方向から力を受けて破損や破壊を生じます。そうすると複雑な力の組合せを考慮して強度を考えねばなりません。
実際の組合せ応力による破損や破壊を推定するためには以下のような考え方の学説が提唱されています。
- 最大主応力説 maximum principal stress theory
- 最大ひずみ説 maximum principal strain theory
- 最大せん断応力説 maximum shear stress theory
- 全ひずみエネルギ説 total strain energy theory
- せん断ひずみエネルギ説 shear strain energy theory, ditorsion energy theory
- 内部摩擦説 internal friction theory
- モールの説 hypothesis of Mohr
金属材料の種類や熱処理の状態によって、上記の学説のどれが最もあてはまるかを見極めて強度を推論することが望ましいです。
たとえば、軟鋼では、ねじりの場合には、最大せん断応力説とせん断ひずみエネルギ説が実験結果とよく整合性がありますが、鋳鉄の場合には最大主応力説が実験結果とよく合うという報告がなされている文献があります。