金型や機械装置の部品は、荷重を受けながら使用されます。荷重は、一定した強さの静加重が作用する場合と、荷重が変動する変動荷重が作用する場合があります。一般的には、変動荷重が作用するケースが多いです。さらに、荷重が繰り返して作用することの累積によって機械部品は、疲労という現象が発生し、本来の静荷重による破壊応力よりも遥かに小さな応力で破壊してしまうことが知られています。
このような、繰り返し荷重の累積による破壊を疲労破壊と呼んでいます。一般的には大半の金型部品や機械部品は、繰り返し応力が107回(10,000,000回)までに破壊するという統計的なデータがあります。疲労破壊を起こす下限の応力のことを疲れ限度と呼びますが、疲れ限度は、以下の要因によって左右されます。これらの要因を不利にならないように配慮することによって疲れ限度を上げることができます。
成形サイクルの短く、ショット数が多くなる金型の部品設計では、疲れ限度を上げる対策を講ずることにより、メンテナンス費用の低減を図ることができます。
【疲れ限度に影響を及ぼす要因】
- 引張強さ
- 切欠効果
- 寸法効果
- 表面あらさ
- 腐食
- 他部品により加わる応力
- 機械加工時の外気温度
- 使用環境温度
- 繰り返し荷重速度
- 組み合わせ荷重
- 重複荷重
- 変動荷重
- 荷重休止
- 疲れ変形
プラスチック射出成形金型部品が疲労破壊する事例として多いのは、コアピンの折損、キャビティの破壊、エジェクタピンの座屈破壊、コイルスプリングの破損などがあります。
金型設計者は、小さな荷重であっても繰り返して作用する場合には必ず疲労破壊を念頭に置かねばなりません。