今回は、金型のモールドベースの底面から射出成形機のプラテンへの熱伝達による損失について考えます。
金型は、射出成形機のプラテンにボルト、クランプ等で締結固定されて使用されます。そうすると金型の底面からプラテンへは接触によって熱伝達が生じることになります。
この熱伝達による損失は思いのほか大きく、金型のキャビティ表面の温度制御にも影響を与えることが知られています。
皆さんはモールドベースの取付板と射出成形機のプラテンの間に断熱版を挟んで使用したことがありますか?断熱板を挟む理由は熱伝達をコントロールするために採用しているのです。
それでは、モールドベース底面からプラテンへの伝達熱量の計算式を紹介します。
QTR=Ac・b・(θTM-θA)・β/βm
- QTR
- :金型側面から大気中へ輻射される熱量(kcal/h)
- Ac
- :輻射率
- b
- :錆のある炭素鋼 0.6
S55Cの場合 86
合金工具鋼の場合 69 - θTM
- :金型の温度調節媒体温度(℃)
- θA
- :周囲の環境温度(℃)
- β
- :断熱板を使用しない場合の熱伝導率
- βm
- :断熱板による熱通過率
この式から判るように、取付板の底面積が大きくなると比例して伝達熱量も増大します。また、取付板の材質によっても熱伝達率が変動することが理解できます。
さらに断熱板の使用の有無、断熱板の材質によって大きく伝達熱量が変動することがわかります。