低速の場合の選定方法
チェーンの速度が50m/min以下の低速においては、チェーンの摩耗による伸びは、ほとんど考える必要はなく、主として疲労強度が寿命を決定します。この場合は、「一般の場合の選定方法」よりも、低速選定法が経済的な選定ができます。低速選定法は、起動停止の少ない円滑な伝動の場合に使用され、雰囲気、配置、潤滑などはすべて一般の場合に準じます。
選定は、次の式を満足するように行います。
表4.速度係数表
ローラチェーンの速度 | 速度係数 |
---|---|
0~15 m/min | 1.0 |
15~30 | 1.2 |
30~50 | 1.4 |
50~70 | 1.6 |
- (1)
- 使用条件の把握
「一般的な場合の選定方法」と同じです。 - (2)
- チェーンと小スプロケット歯数の選定
表3の簡易選定表より回転数(r/min)と原動機(kW)から、やや小さめのチェーンとスプロケットを選びます。 - (3)
- チェーンの速度の計算
選定されたスプロケット(チェーンピッチ、歯数)と回転数(r/min)よりチェーン速度を求めます。
- V
- :チェーンの速度(m/min)
- P
- :チェーンのピッチ(mm)
- N
- :スプロケットの歯数
- n
- :スプロケットの回転数(r/min)
- (4)
- チェーンの最大作用荷重の計算
チェーンにかかる最大荷重を求めます。
- F
- :チェーンにかかる荷重(kN)
- V
- :チェーンの速度(m/min)
- kW
- :伝動力(kW)
- (5)
- 使用係数の決定
使用係数表(表1)より使用係数を求めます。 - (6)
- 速度係数の決定
(3)で求めたチェーン速度より速度係数を求めます。 - (7)
- チェーンの最大許容張力の検討
(4)~(6)で求めた数値を選定式に代入し、(2)で選定した、チェーンの最大許容張力と比較し、選定式を満足するか否かを検討します。
もし、満足しない場合は、チェーンとスプロケットを替えて再検討してください。 - (8)
- 大スプロケットの歯数、軸径の確認、チェーン長さの計算
これらの選定は、「一般的な場合の選定方法」と同じです。
低速で衝撃荷重が作用する場合の選定方法
急激な起動・停止、または逆転制動、ブレーキ制動が頻繁で多くの衝撃荷重が作用する条件においては、原動機と非原動機の慣性(GD2)を考慮する必要があります。
一般的な伝動の場合と比べて、チェーンにはかなり大きな荷重が作用しますので、十分注意する必要があります。
チェーンの選定は次の方法に従ってください。
衝撃係数
原動機と被動機との慣性比(GD2の比)、および伝動装置のガタの大きさにより定まる定数で(表5)の通りです。なお極端にガタの大きい場合は、この値よりも大きい衝撃がかかることがあります。
表5.衝撃係数表
ステンレスローラチェーン(CHES)の選定方法
ステンレスローラチェーンの選定方法は低速の場合の選定方法を使用してください。
- 1)
- 最大許容張力はCHE(スチールタイプ)ローラチェーンに比較してCHES(ステンレスタイプ)は低くなっています。
- 2)
- オフセットリンクの使用はできる限り避けてください。
温度選定法
ローラチェーン温度選定法
温度に対して強度低下を見込んだサイズ選定法です。
- 1)
- 高温でのローラチェーン伝動の問題点
- ①
- 硬さの低下による摩耗の増大
- ②
- 軟化による伸びの増大
- ③
- 油の劣化、炭化による給油不良と屈曲不良、摩耗の増大
- ④
- スケールの発生による摩耗の増大と屈曲不良
- 2)
- 低温でのローラチェーン伝動の問題点
- ①
- 低温脆性による衝撃強度の低下
- ②
- 潤滑油の凝固
- ③
- 霜や氷の付着による屈曲不良
高温・低温におけるローラチェーンの伝動能力の目安
温度 | CHEローラチェーン | |
---|---|---|
CHE60以下 | CHE80以上 | |
−60℃以下 | − | − |
−60℃をこえ−50℃まで | − | − |
−50℃をこえ−40℃まで | − | 使用不可 |
−40℃をこえ−30℃まで | 使用不可 | カタログ値 ×1/4 |
−30℃をこえ−20℃まで | カタログ値 ×1/4 | カタログ値×1/3 |
−20℃をこえ−10℃まで | カタログ値×1/3 | カタログ値×1/2 |
−10℃をこえ 60℃まで | カタログ値 | カタログ値 |
60℃をこえ 150℃まで | カタログ値 | カタログ値 |
150℃をこえ 200℃まで | カタログ値×3/4 | カタログ値×3/4 |
200℃をこえ 250℃まで | カタログ値×1/2 | カタログ値×1/2 |
250℃をこえる | 使用不可 | 使用不可 |
ステンレスローラチェーンの高温における選定法
- ①
- 400℃までは低速選定法を使用します。(一般選定法の使用はできません。)
- ②
- 400℃以上は下表に示す温度係数を使用します。
- ③
- 選定式
温度係数(Kt)
温度 | 係数(Kt) |
---|---|
400℃以下 | 1.0 |
400℃をこえ500℃まで | 1.2 |
500℃をこえ600℃まで | 1.5 |
600℃をこえ700℃まで | 1.8 |
700℃をこえる | 使用不可 |
400℃以上では耐食性が劣化しますので、それを考慮して選定してください。
出力とトルクの換算
- トルク:
- 1kg・m=100kg・cm
- 1kg・m=9.8N・m (ニュートンメートル)
- 1N・m=0.120kg・m
- 1r/min =1rpm
トルクと回転数の組み合せで表示した時