伝動能力の選定

伝動能力表は、次の諸項を条件としています。

1)
-10℃~+60℃の空気中で運転され、摩耗性の粉塵がないこと。
2)
腐食性のガス、高度の湿気などの悪影響がないこと。
3)
伝動する2軸が水平で、適切な配置据付が行われていること。
4)
推奨の潤滑形式と潤滑油を使用すること。
5)
負荷変動の少ない伝動であること。

使用係数表

伝動能力表は、負荷変動の少ない場合を条件としていますから、負荷変動の大小により、伝動kWを補正するものです。

表1 使用係数表

衝撃の種類 使用機械例 原動機の種類
モータタービン 内燃機関
流体機構付 流体機構なし
平滑な伝動 負荷変動の少ないベルトコンベヤ、チェーンコンベヤ、遠心ポンプ、遠心ブロア、一般繊維機械、負荷変動の少ない一般機械 ×1.0 ×1.0 ×1.2
多少の衝撃を伴う伝動 遠心圧縮機、船用推進機、多少負荷変動のあるコンベヤ、自動炉、乾燥機、粉砕機、一般工作機械、コンプレッサ、一般土建機械、一般製紙機械 ×1.3 ×1.2 ×1.4
大きな衝撃を伴う伝動 プレス、クラッシャー、土木鉱山機械、振動機械、石油さく井機、ゴムミキサ、ロール、ロールガング、逆転あるいは衝撃荷重のかかる一般機械 ×1.5 ×1.4 ×1.7

多列係数表

多列ローラチェーンの伝動能力は、チェーンの各列にかかる荷重が均分されないため、単列ローラチェーンの列数倍の能力は期待できません。したがって、多列ローラチェーンの伝動能力は1列ローラチェーンの伝動能力に多列係数を乗じて求めます。

表2 多列係数表

ローラチェーン列数 多列係数
2列 ×1.7
3列 ×2.5
4列 ×3.3
5列 ×3.9
6列 ×4.6

簡易選定表

表3 簡易選定表

表3.簡易選定表

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表の見方

例:
補正kW=5kW、小スプロケット回転数=300r/min、1列チェーンの場合
補正kW(縦軸)と回転数300r/min(横軸)の交点はCHE 60の23T(23歯)より小さく17T(17歯)より大きい範囲にあります。交点の位置から19Tが使えると判断します。

一般的な場合の選定方法

1. 使用条件の把握

ローラチェーンの選定には次の7つの条件を把握してください。

  1. 使用する機械
  2. 衝撃の種類
  3. 原動機の種類
  4. 伝動力(kW)
  5. 高速軸の軸径と回転数
  6. 低速軸の軸径と回転数
  7. 軸間距離

2. 使用係数の決定

伝動しようとする機械、および原動機の種類によって使用係数表(表1)に基づき使用係数を決めます。

3. 補正伝動力(kW)の決定

伝動力(kW)を使用係数により補正します。
・単列チェーンの場合…補正伝動力(kW)=伝動力(kW)×使用係数
・多列チェーンの場合…多列係数表(表2)より多列係数を決めます。

補正伝動力(kW) 計算式

4. チェーンとスプロケット歯数の選定

簡易選定表(表3)または伝動能力表を使って高速軸の回転数と補正伝動力(kW)を満足するチェーンと小スプロケットの歯数を求めます。このとき、所要の伝動能力をもつ最小ピッチのチェーンを選定します。この際できる限りピッチの小さいチェーンを選定したほうが騒音も少なく円滑な伝動が得られます。(もし単列のチェーンで能力不足のときは、多列のチェーンを選定してください。また取付場所のスペースに制限があり、軸間距離を短く、できるだけスプロケットの外径を小さくしたいときは、ピッチの小さい多列チェーンをご使用ください。)なお、小スプロケットとチェーンの巻付角度は120°以上としてください。

5. 大スプロケットの歯数の選定

大スプロケットの歯数=小スプロケットの歯数×速比
小スプロケットの歯数が決まれば、これに速比を乗じて大スプロケットの歯数を決定します。一般の場合、小スプロケットの歯数は17歯以上、高速では21歯以上、低速の場合は12歯以上が適当ですが、大スプロケットの歯数が120歯を越えるものは好ましくありません。また速比が1:1、または2:1のときはなるべく大きな歯数のスプロケットを選定してください。通常、速比は1:7以下とし、できれば1:5程度でご使用ください。

6. 軸径のチェック

選定された小スプロケットが所要の軸径で使用ができるかどうかチェックします。カタログ本ページ規格表をご参照ください。ボス径に対して大きい場合は、歯数を増すかさらに大きなチェーンを選定してください。

7. スプロケットの軸間距離

軸間距離の最短は2つのスプロケットが互いに接触しなければ良いのですが、小スプロケットの巻付角度が120°以上になるようにしてください。
一般的に好ましい軸間距離は使用するチェーンピッチの30~50倍ですが、脈動荷重が作用するときは20倍以下にしてください。

8. チェーンの長さとスプロケットの軸間中心距離の計算

チェーンおよび両スプロケットの歯数、軸間距離が決定されましたらチェーンリンク数の計算式により長さを決定します。

補正伝動力(kW) 計算式

Lp
:チェーンの長さをリンク数で表したもの
N1
:大スプロケットの歯数
N2
:小スプロケットの歯数
Cp
:軸間中心距離のリンク数で表したもの
π
:≒3.14
(1)
チェーンの長さの計算(スプロケットの歯数N1、N2と軸間中心距離Cpが決まっている場合)

チェーンの長さの計算(スプロケットの歯数N1、N2と軸間中心距離Cpが決まっている場合)
※Lpの小数点以下の値は切り上げてください。

一般的には、チェーンの長さはなるべく偶数リンクに切り上げて選定します。軸間距離の関係でどうしても奇数リンクとなる場合は、オフセットリンクを使用しなければなりませんが、なるべくスプロケットの歯数または軸間距離を変えて偶数リンクになるようにしてください。

(2)
軸間中心距離の計算(スプロケットの歯数N1、N2とチェーンの長さLpが決まっている場合)

軸間中心距離の計算(スプロケットの歯数N1、N2とチェーンの長さLpが決まっている場合)

ローラチェーンの所要長さ計算式で得られるピッチ数は、任意の軸間距離と合致する事は殆どなく近似値にすぎないので所要全長より両軸中心距離を再度精密に計算します。

一般的な場合の選定方法による選定例

3.7kW、1,000r/minの電動機(モータ)、でコンプレッサを伝動する場合。

(1) 使用条件の把握

1)
使用する機械:コンプレッサ、10時間運転
2)
衝撃の種類:平滑な伝動
3)
原動機の種類:電動機
4)
伝動力(kW):3.7kW
5)
回転数:1,000r/min

(2) 使用係数の決定
表1より、使用係数は1.2とする。

(3) 補正伝動力(kW)の決定
補正伝動力(kW)=伝動力(kW)×使用係数
=3.7kW×1.2=4.44kW

(4) チェーンとスプロケット歯数の選定
1,000r/min、4.44kWについて表3の簡易選定表を見ますと、チェーンはCHE40、スプロケットは17Tぐらいであることがわかります。
ここでCHE40チェーンの伝動能力表で確認しますと、歯数13Tで1,000r/minのときの伝動能力は4.09kWで補正伝動能力を満足させられませんので、スプロケットの歯数を19Tとしますと、伝動能力は4.6kWとなりますから伝動が可能でこれを選べばよいことになります。

結果 選定されたのは、チェーン=CHE40
小スプロケット歯数=19T