Q
絞り高さとプレス機械のストローク長さとの関係について知りたい。
A
加工とプレス機械のストローク長さの関係は、絞り加工のとき、最も注意しなければいけません。【図1】で説明します。
(a)は絞り落としという加工の状態を示しています。フランジのない製品の加工のとき成立します。絞り終わった製品をダイの下に落とします。この加工では図に示すように、ダイ寸法と製品高さの合計以上のストローク長さがあれば、絞り加工を行うことができます。絞り加工の中で、最も短いストローク長さで加工することができます。
(b)はフランジのある製品の加工です。単発加工(人が作業して加工する)を想定したときのストローク長さです。ダイ上に置かれた材料は下死点に向かって絞られます。下死点に到達した後、ダイの中の製品は取り出すために押し上げられます(下向き絞りで説明していますが上向き絞りでも同じ)。図のように製品がダイからすっかり出た状態で、製品は金型の外に取り出すことができます。したがってストローク長さは製品高さ2倍以上が必要となります。一般的には製品高さの2.5倍から3倍程度が最低必要と言われています。
(c)は順送り加工やトランスファー加工を想定したときのものです。製品をダイから取り出さし移動させるためには、製品の高さの2倍にリフト量を加えた高さが必要です。更に、材料の移動時間(送り時間)を考慮しなければいけません。ストロークの一部を使うことになります。このようなことから自動加工のときには、ストローク長さは、製品高さの最低で3倍、できれば4倍以上の長さが必要とされています。
もう一つ注意しなければいけないものに、クランクプレス等の機械プレスを使用して絞り加工を行うときの、加工開始点付近での加工に必要な力と、プレス機械のトルク能力曲線の関係についてです。【図2】で説明すると、縦軸はストロークです。横軸は加圧能力を示しています。クランクプレスでは上死点付近では加圧能力は小さく、下死点に向かって加圧能力は増加します。この圧力曲線をトルク能力曲線と呼びます。製品加工に必要な力はこの線を越えてはいけません。加工曲線Aは問題ありませんが、加工曲線Bはダメです。
製品取り出しや材料送り等との関係と同時に、加工力についてもチェックしないといけません。