抜き加工では、加工された材料はダイ上に残るものと、ダイを通過して下に落ちるものとに分かれます。下に落ちるものが製品であれば、だれも丁寧に扱いますが、スクラップとなると適当に処理しなさいとなることが多いように思います。このようなことが金型段取り改善等のときに問題となることが多いように思います。【図1】は穴抜き加工の例で、金型とスクラップの関係を示したものです。スクラップはダイを通過して下に落ちます。
【図2】は、プレス機械のボルスタプレートを示しています。
金型の下型はこのプレートに固定されます。プレス機械にダイクッション装置のないものでは、図に示すようなかす落とし穴があけられています。スクラップや製品はここを通過して収納容器に収まります。図では四角のかす落とし穴ですが、丸い形状もあります。かす落とし穴は大きいほど融通がつきますから都合がよいのですが、金型の支えが無くなり、金型保持が問題となります。金型保持面からみれば、かす落とし穴は小さい方がよいのです。通常、かす落とし穴は【図2】(a)の断面形状です。順送加工などでスクラップがでる面積が大きいときに、ボルスタプレートの強度を保ちながらスクラップを落とす工夫として、【図2】(b)のように穴をテーパ状にして、回収面積を広げる工夫があります。
プレス機械がダイクッションを装備している場合、ダイクッションがボルスタプレートのかす落とし穴部分にくるため、ボルスタプレートを通過して落とすことができなくなります。結果、【図3】に示すように、金型の下にスクラップ回収用(製品回収の場合もある)の空間を作ります。このときに金型下に入れるプレートをゲタ(平行ブロック、スペーサ、ヨウカンなどとも呼ばれる)と呼びます。
ゲタは、金型が加工力によって大きく変形しないように支える目的と、スクラップを溜める空間を作り出す狙いがあります(プレス機械に対する金型の高さであるダイハイトを合わせるために使うこともあります)。この空間に溜まったスクラップは、ゲタの間から掻き出して処理します。適当に大きなスクラップであれば処理しやすいのですが、穴抜きの小さなスクラップはボルスタ上に残り、金型交換のときにボルスタプレートや金型を傷つけたりする原因となります。ときには、周囲に散乱して環境を悪くすることもあります。そのため、プレス作業時間が長い(生産量が多い)作業では、スクラップを掻き出す代わりにコンベアーやシュート等を設置して取り出すこともします。少量生産のときには図に示すようなスクラップ受け容器を作り、回収する方法もあります。穴抜きのスクラップが散乱せずに回収できるなどのメリットがある反面、生産量が多いものに採用すると、中がいっぱいであるのにきずかずに作業を続け、金型を壊す危険もあります。
スクラップの処理方法は一様ではなく、スクラップの形状、大きさと生産数の関係などから考えねばならない面があります。