通常の抜き加工では、パンチ・ダイの切れ刃によって、材料は【図1】に示すように「だれ→せん断面→破断面→バリ」の順で、切り口面が形成されます。
プレス加工で最も多く利用されている軟鋼板(SPC材)を標準的なクリアランスで切断すると、せん断面の長さが材料板厚の1/3程度となり、バリの高さは0.03〜0.05程度が目安とされます。この程度のバリを平常な許容範囲内と考えられる場合、「かえり」と呼び、異常と区別することがありました。
最近ではPL法の関係から、小さなバリでも手や指のすり傷の原因となると判断され、面打ち等でバリを無くす要求も多くなってきています。
バリは極力小さくしたいものです。加工する材質によって、バリの出方が違います。軟質材は材料の伸びが大きいことから、バリが出やすくなります。そのために、抜きクリアランスを小さくします。硬い材料は割れやすい(もろい)ことから、クリアランスを大きめにしてもよいのです(クリアランスは大きい方が打ち抜き力が小さくなります)。黄銅材では、亜鉛の量を増やすと伸びが小さくなり、もろくなります。抜きの改善対策として、亜鉛の量をコントロールすることがあります。
適正クリアランスを採用すれば、バリは小さくなります。そのため、抜き形状に対して均一になるようにクリアランスを設定します。これが抜き型を作るときの基本的な姿です。ところが、均一なクリアランス設定をしても、バリが早く出てしまう形状があります。【図2】に示すような鋭角な凹凸部分の頂点で著しく、コーナーにRを持たない角部が次に準じます。
パンチまたはダイの角部のチッピングが原因です。形状的な面と打ち抜き条件からくるものとの複合でチッピングを起こします。適正クリアランスを採用しても、コーナー部は抜け条件が悪く(クリアランス小と似た抜け状態となる)、正常な切り口面とならないのです。直線部分と同じ、抜け条件となるようにすることが対策です。方法は2つあり、コーナーにRを付ける(材料板厚の1/2以上の大きさのRを付ける)、クリアランスを大きくすることです。
パンチ・ダイの関係によるバリ発生もあります。【図3】がそうです。
クリアランスの片寄りとねじれがよく見られる現象です。
抜き型のクリアランスのチェックは、紙やビニールを抜くことで確認できます。紙またはビニールをダイの上に乗せ、パンチがほんのわずかダイに入り込む状態で止め、紙またはビニールの抜け状態を見ます。きれいに切れている部分はクリアランスが小さい。紙の繊維が切れずにつながっている。ビニールが伸びた状態で切れていないのは、クリアランスが大きい。均一な切れ方となるように調整します。
以上の他にもバリ発生の原因となるものはあります。代表的なものを紹介しました。