プラスチック射出成形金型では、溶けたプラスチック材料を流動状態のまま金型の内部へ流入させてキャビティ内を充填し、充填完了後は冷却固化させて、成形品の形状に固定させるプロセスを経ることになります。
この一連のプロセスの中で、流動状態の間はキャビティの温度は高いほうが流動性が良く、低い圧力で安定した充填が可能になります。一方、冷却固化させる場合には、成形サイクルを短縮させて経済効率を改善させるために、なるべく低いキャビティ温度であることが望ましいです。
このようなキャビティ表面温度のコントロールを、数秒から数十秒の時間内で対応させることは、通常の金型構造では簡単なことではありません。
一般的には、上記のような相反するキャビティ表面温度のコントロールを折衷した温度帯を選定して、水冷やカートリッジヒーターで温度コントロールをしています。
また、キャビティ表面の温度分布に関しては、なるだけ温度差の小さな分布であることが収縮状態を安定させ、そりや変形、表面光沢などの差を少なくするのに有用です。結晶性樹脂の場合には、結晶粒の大きさや分布の安定化にも有効です。
プラスチック射出成形用金型の温度コントロールに関しては熱の移動について、次の3つの形態が考えられます。
- 熱伝導(材料内部における熱の移動)
- 対流(液相から固相への熱移動)
- 輻射(電磁的な放射による熱移動)
実際の射出成形金型の中における熱の移動は複雑で簡単に解析することは大変難しいです。熱収支の計算ではある程度の方向性を確認しつつ、局部的な対策は実験データや経験則を活用して成形品品質の実現やサイクルタイムの適正化を図るアプローチ手法が現実的であると考えられます。
いずれにしても今後登場してくる新しいプラスチック材料は金型内で、熱の移動をどのように正確に管理するのかが重要であるということは、共通課題であると思います。熱を保持するのか、解放させるのか、コンセプトを金型設計の段階でよく検討をすることがますます重要になってきます。