(5)ニッケル合金
ニッケルは高価な金属ですが、ニッケル合金は厳しい腐食環境の中で、他の金属にはないすばらしい耐食性を示す重要な金属です。
■モネルメタル
銅を30%加えた合金で、高速の海水に耐えるので、バルブの擦り合わせ部分やポンプのシャフトなどに用いられています。また他の金属にない、ふっ酸に強いという特徴もあります。しかし硝酸やクロム酸などのように酸化性のある環境には強くありません。
■インコネル600
クロム16%、鉄7%を加えた合金で、高温での酸化に対して強いほか、酸化性の水溶液中でかなり強い耐食性を示します。
■インコネル625
クロムを20〜23%、モリブデン8〜10%加えた合金で、酸化性水溶液の耐食性に、インコネル600より強い耐食性を示します。この合金はオーステナイト系ステンレス鋼の弱点である孔食、すき間腐食、塩化物による応力腐食割れなどを殆ど起さない材料であります。
■ハステロイC
クロム15%、モリブデン16%、少量のタングステンと鉄を含む合金は、インコネルと同様の高耐食材料でありますが、粒界腐食の感受性があるので、炭素を0.02%以下にしたハステロイC276などがあります。これはインコネル625と同様、孔食、すき間腐食、応力腐食割れなどを生じません。
■ハステロイB
モリブデン30%、鉄5%を含む合金で、インコネル625やハステロイC276が、塩酸や硫酸などの非酸化性の酸に強くないのに対して、塩酸のあらゆる温度に耐え、60%の硫酸までなら沸騰した液にも耐えます。しかし硝酸などの酸化性環境には、弱い欠点をもっています。
(6)チタンとチタン合金
チタンといえば万能で腐食に強いということが定着していますが、事実、非常に強い耐食性をもち、海水中で孔食やすき間腐食を生じません。やや水分があれば、他の金属では対処できない塩素ガスにも強く、硝酸にもあらゆる温度で耐えます。
しかし、この金属も不動態皮膜が耐食性を高めている金属ですから、塩酸や硫酸には弱く、高温で濃厚な塩化物が存在する環境では、すき間腐食を生じます。
そこで、チタン表面の不動態化を容易にするために、パラジウムを0.2%加えた合金や、少量のニッケルやモリブデンを加えた合金もあります。
機械的強度の向上のために、高力チタンが開発されています。代表的なものに「6-4合金」があります。これはアルミニウム6%とバナジウム4%を含むものですが、純チタンに比べると耐食性は劣り、塩分の存在下では応力腐食を発生します。