射出成形金型を成形機に取り付け、溶融樹脂を射出ノズルから金型内部へ注入しますと、キャビティ内部には高い充填圧力が作用します。この圧力によって金型のパーティング面は開こうとしますので、これを瞬間的に開かないように締め付けておく必要があります。
もし、パーティング面がほんの少しだけでも開いてしまったならば、バリが発生してしまうことは容易に想像ができると思います。
この金型を締め付けておく力のことを「必要型締力(必要かたじめりょく)」と呼びます。必要型締力の単位は、力の単位であるN(ニュートン)またはkgf若しくはtfです。
金型を新規に設計する際には、金型がどのぐらいの必要型締力の射出成形機に取り付けるのが最適であるのかを理論計算で求めておく必要があります。
仮に、100tfの必要型締力が計算で求められていたとして、この金型を75tfの成形機に取り付けた場合、成形品はバリだらけとなり成形加工が不可能となってしまいます。また、300tfの成形機に取り付けた場合は、成形加工は可能であっても、成形機の時間工賃が100tfよりも300tfの方が一般的には高額なため、成形加工コストは高くなってしまいます。
金型の必要型締力は、下記の計算式により求めることができます。
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pは、300〜500kgf/cm2程度の範囲の値となります。樹脂の種類や成形品肉厚、キャビティ表面温度、成形条件等によってpは変動します。より正確には、キャビティ内に圧力センサーを組み込んで、実測値の目安データを採集しておくことが推奨されます。
Aは、キャビティとランナーのパーティング面に対する投影面積の合計となります。したがって、取り個数やランナー配置によって、Aの数値は変動します。
■計算例
PBT樹脂ガラス30%入り、4個取り成形品の必要型締力を計算する。
計算の前提条件
キャビティ内圧力 P=300kgf/cm2 と仮定。
キャビティ1個の投影面積 A1=15.3cm2
ランナーの投影面積 A2=5.5cm2
F=p×A/1000
=300×(15.3×4+5.5)/1000
=20.01(tf)
したがって、必要型締力は20t程度は必要。余裕を考えて、成形機は25〜30tf級を選択するのが最適と考えられます。