成形品のデザインでは、アンダーカット形状(パーティング面の開閉だけでは取り出すことができない形状のこと。例えば、横穴、突起、凹みなど)がどうしても必要になることがしばしばあります。
アンダーカット形状は、スライドコアや傾斜ピンなどの特殊な金型構造で成形品を取り出せるように機械工学的に金型を設計しなければなりません。
最もシンプルなスライドコア構造でアンダーカット処理ができれば設計は楽なのですが、複雑なアンダーカット形状を処理するにはそれなりの金型設計の知恵を編み出さねばなりません。
試作金型などで、とにかく成形品サンプルを早期に入手して、実装テストなどを始めたい場合には、特殊なアンダーカット機構の開発や金型製作をしてしまうと納期が2週間とか長くかかってしまう場合があります。このような場合に、先輩たちが工夫して対処してきたアンダーカット処理方法に「置き中子(おきなかご)」構造があります。
「置き中子」構造とは?
・成形品のアンダーカットとなる部分を構成するコア、またはキャビティを分割して設計、製作します。
・分割して製作された中子は、成形品の突き出し時に成形品と一緒に金型の外に取り出されます。
・中子は、手作業で成形品から取り外します。
・中子は、次の成形加工の際に金型へ手作業で取り付けます。
・つまり、置き中子構造では連続射出成形加工はできず、半自動成形で手作業によってアンダーカット形状を形成させる方法ということです。
・置き中子は、自分自身を金型から取り出すためにエジェクタピンで押し出す場合もあります。
・置き中子の位置を決めるために、キー構造やノックピン構造を採用する場合もあります。
・置き中子を余熱して成形する場合もある。
・置き中子を2個作っておいて、次々と交換しながら半自動成形を効率的に対応する成形方法もあります。
・置き中子の挿入方向を間違えないように、方向を決める構造を採用するアイデアもあります。
・置き中子の取り付け、取り外しをしやすいように逃げ、クリアランス設計を的確に行うことがポイント。
・とりあえず置き中子構造で試作金型を起こし、その間にスライドコア構造など連続成形加工できる金型構造を開発する時間稼ぎをできという経営的側面もあります。