キャビティ、コアの構造として入れ子分割構造が多用されています。分割は、下記のような事項を目的としています。
1. 機械加工が困難な部分を別部品として分割し、機械加工しやすくする。
機械加工コストが低減され、加工品質が向上できる。
2. 分割面からエアーやガスを排出させるエアーベント機能を持たせる。
3. 破損しやすい部品を交換しやすいようにあらかじめ分割しておく。
入れ子分割のパターンとしては、以下のようなパターンが考えられます。
1. 丸コアピン形状分割
2. 角形コア形状分割
3. 異形状分割
これらの中で、角形コア形状に分割した場合の組み込みにおける、ちょっとしたノウハウを紹介したいと思います。
【図】には、角形コア形状の分割例を示します。角形コアを挿入するためには、メインコアに角形状の穴を機械加工する必要があります。
加工法は、ワイヤーカット放電加工、形彫り放電加工、さらにメインコアを分割して研削加工などが一般的に採用されます。
いずれの加工法であってもコーナー部には微小Rが残ってしまいます。Rの大きさは、R0.15〜R0.05程度です。このように微少なRでも残っておりますと、コアのコーナーがシャープエッジの状態のまま、組み込みをしようとすると、なかなか組み込みがうまく行きません。無理に銅ハンマーなどで叩き込んでしまうと、コーナーのエッジが不安定な状態でつぶれてしまうおそれがあります。
スムーズに組み込むためには、コアのシャープエッジ部を機械加工、若しくは手仕上げで角穴コーナーRに合わせた微小面取りを施します。このようにすれば、組み込みはスムーズに行えます。RとCの大きさが微妙にずれているためにクリアランスが生ずる場合がありますが、クリアランスが0.03程度であれば、溶融樹脂が流入してバリになる危険性は極めて低いと言えます。かえってエアーの排出が効果的になることもあります。
ただし、PPSなどの流動性の良好な材料など特殊な環境では、クリアランス管理は、試作データに基づいて行うことをお勧めします。