プラスチック射出成形金型には、溶融樹脂の充填の際に高い内部圧力を受け、また型締めの際にも高い圧縮応力を受けます。さらに、大きな金型になると自重により曲げ応力を受けたりもします。
外部や自重による応力に対して、変形や破壊が発生しないようにするためには、金型の剛性を強くする必要があります。
ここで、剛性(ごうせい)について、基本に立ち返って再認識をしてみたいと思います。
剛性(Rigidity)とは、荷重に対する変形抵抗のことです。材料の縦弾性係数Eと横弾性係数Gが剛性を左右します。
EまたはGの数値が大きな材料ほど、高い剛性があります。つまり、曲げやねじりに対して強い抵抗を示します。もう少し、わかりやすく言えば、曲がりにくく、たわみも小さいということです。
例えば、SCM440系プリハードン鋼のEは、203×104(kgf/cm2)ですが、SKD11(冷間ダイス鋼)のEは、210×104(kgf/cm2)ですから、SKD11の方が剛性が高いと言えます。
さらに詳しく説明しますと、剛性には、「曲げ剛性」と「ねじり剛性」があります。プラスチック射出成形金型では、特に「曲げ剛性」が重要になります。
曲げ剛性(Flexual rigidity)は、曲げ荷重に対する変形抵抗のことを指します。一般に、曲げ剛性は、「E×I」で表現されます。
(Iは、断面二次モーメントのこと。詳しくは、以前の講座を参照して下さい)
曲げ剛性を高めるためには、E×I の積を大きくするようにします。つまり、縦弾性係数Eの大きな材質を選定し、かつ断面二次モーメントIが大きくなる断面形状を採用することが、「曲げ剛性」を大きくすることになります。
「曲げ剛性」が高い構造であれば、たわみも少なくなり、曲げ変形による破壊にも対抗できるようになります。