今回は、成形品に穴を作りたい場合の金型の基本構造について解説をします。
成形品に穴を作るためには、キャビティやコアピンにより、樹脂が流れ込まない部分を形成する必要があります。その基本構造例を【図1】に例示します。
A.突き当て構造
この構造は、最も基本的な構造です。片側から突起を設け、相手側の平面に接触させて、穴を形成します。
突起側の突き当てされる面については、「突き当てしろ」として、基準高さ寸法より0.005〜0.03mm程度長くコアピン等を製作しておくことがノウハウです。
そうすれば、突き上げ面にバリが発生しにくくなり、成形品の穴の周囲はシャープなエッジが得られます。
この構造の弱点としては、コアピンが細長い場合には、樹脂の充填圧力により、コアピンが変型し、穴位置がずれたり、穴が曲がったりする危険性があります。
また、充填圧力によりコアピンが折損する場合もあります。
B.インロー構造
この構造は、片側から設けた突起の先端を、相手側に設けた穴に勘合させて、穴を形成します。
このような構造とすれば、コアピンは両端支持梁構造となりますから、樹脂圧力に対抗する能力が、突き当て構造より有利となり、コアピンの折損防止や穴位置ずれの防止に効果があります。
突起先端と嵌合穴の側面周囲にはテーパーを設け、滑らかに嵌合できるようにします。
この構造の弱点は、金型の加工コストが突き当て構造より高額となる点です。
C.中間での突き当て構造
この構造は、両側から突起を設け、中間で突き当てする構造です。
この構造では、コアピンの全長が短くできるので、折損の危険性を低減させることができます。
弱点としては、成形品の穴の途中に分割線が発生する点が挙げられます。
D.食い切り構造
この構造は、両側から突起を設け、中間で角度合わせをする構造です。
E.中間でのインロー構造
この構造は、BとCの構造の中間的な存在です。