プラスチック射出成形金型では、高温で溶融しているプラスチックを金型のキャビティ内へ射出注入し、冷却によって熱を奪い、プラスチックを液体から固体へと固まらせて成形品を生産します。これはあたりまえの工程なのですが、熱量の移動という観点から考えますと、【入って来る熱量】と【出て行く熱量】がいかほどなのかを真剣に考えようとすると結構難しいことが判ると思います。
熱の伝わり方には次の3つのパターンがあります。
- (1)
- 熱伝導
- (2)
- 熱伝達
- (3)
- 熱輻射
したがってプラスチック射出成形における熱の伝わり方も(1)、(2)、(3)のいずれかの伝わり方によります。
通常は、射出注入されるプラスチックの樹脂温度よりも、金型のキャビティ温度の方が低い状態になっています。これは溶融している樹脂を固化させるためには当然のことです。
次に、キャビティ内に充填された溶融樹脂から入ってくる熱量QPLは、熱伝導によってキャビティへ伝わります。
次いで、キャビティが受け取った熱は、モールドベースへやはり熱伝導で伝わります。
最後に、モールドベースから大気中へ対流熱伝達QCVと輻射熱伝達QRの2つで伝わり、さらにモールドベースから射出成形機のプラテンへ、熱伝達QTRによって伝わります。
したがって、整理をしますと次のような関係であることが判ります。
【金型から出て行く熱量】
QPL+QCV+QR+QTR
金型から出て行く熱量はQPLだけであると考えがちですが、モールドベースから大気中やプラテンへ放出される熱量も無視できないことがわかると思います。
これらの熱の出入りを金型設計の際に熱収支設計をいかに精度よく行うことができるかが、これからの射出成形金型の設計では大変重要になります。その目的を例示すれば下記の項目が挙げられます。
- (1)
- 新しいプラスチック素材の成形技術確立
- (2)
- ハイサイクル成形→冷却時間の最短化
- (3)
- 成形品表面品質の改良
- (4)
- スクラップレス成形
- (5)
- 成形品品質ばらつきの低減