最近の射出成形用プラスチックは、高耐熱性、高強度を兼ね備えた素材が増えてきている結果、融点が高くなる傾向が顕著であり、したがって射出シリンダーの設定温度も高くしなければならない場面が増えてきています。
そのような傾向に沿って、金型の保持温度も高温に設定しなければならない場面が増えてきています。
樹脂の溶融温度が300℃を越えるような場合には、金型温度は120〜200℃付近の温度域に設定しなければならないケースが多いです。そうしますと、型板やキャビティの熱膨張が大きくなり、金型の開閉に際しては、スムーズな動作ができなくなる場合があります。
熱膨張による寸法の変化量は、金型の大きさに比例しますので、大きなサイズの金型では0.2ミリ級の寸法変化が生じる場合もあります。また、厄介なことに可動側と固定側では型板の厚みや形状が異なっていますから、熱容量も必然的に差が生じ、金型の熱膨張による狂いは不均等になってしまいます。
このような状態で金型を開閉すると、ガイドピンとガイドブシュの間でかじりをしょうじたり、異音が発生し、最悪の場合には金型を開閉することができなくなる場合があります。
このような状況をクリアーするためには、以下の方策を採用することが実務上では有効です。
- 型板用ガイドピンとガイドブシュのクリアランスを大きく設定する。
一般的にはガイドピンの外形を、従来タイプよりも0.05〜0.1ミリ程度細くします。 - キャビティ−コアの位置決めは、精密位置決めブロックやテーパーピンセットを採用して、金型のなるだけ中心部に近い場所で位置決めをする構造を採用する。