プラスチック射出成形金型部品に使用される金属材料は、特殊鋼が大半を占めていますが、鋳鉄、銅合金、アルミニウム合金、超硬合金なども使用されています。
これらの金属材料は、引張強度や曲げ強度、かたさなどの特性がありますが、金型部品の破壊を考える上では素材が「延性材料」であるのか「ぜい(脆)性材料」を知っておくことは重要です。
なぜならば、延性材料とぜい性材料は、破壊に至るプロセスが全くことなることから、万が一、部品が破壊した場合でも最悪の事態を回避できるようにするためには、いずれの性質に属する素材を使用すべきかを、設計の時点で検討すべきであるからです。
まず、延性材料とは、力が作用した際に大きな塑性変形を伴う破壊をする材料のことです。延性材料は、破壊に至るまでの亀裂は延性亀裂です。
延性亀裂とは、せん段破壊を主体とする亀裂である、ボイドができ、それらが互いに連結して亀裂となる過程をとることが多い。亀裂の表面は、繊維状をしており、灰色であることが多い。
これに対し、ぜい性材料とは、力が作用した際に、塑性変形をほとんど伴わずに部品内に亀裂が進展して一気に破壊する性質の材料のことです。
素材の結晶構造や固溶元素に起因して特定の結晶面でへき開を起こし易くなっている場合や、偏析や化合物の析出によって粒界が剥離しやすくなっている場合に、ぜい性破壊が生じます。
延性材料は、材料が降伏しはじめて亀裂が生じた後でも破断までには、さらに大きな力の作用が必要であるため、部品の破壊が始まってから完全の破断するまでには時間がかかりますから、異常が発見された時点で機械を停止させれば、破壊する前に重大事故を防止することができます。
これに対し、ぜい性材料は、材料に亀裂が生じたらすぐに破断まで一気に至ってしまいますので、回転軸や柱構造のような部材には使用することは危険です。
金型に使用される素材では、それぞれ以下のように分類されます。
■延性材料
- S50C
- ステンレス鋼
- プリハードン鋼
- 焼き入れした後、適切に焼き戻しをした炭素鋼
- 銅合金
- アルミニウム合金(ジュラルミンなど)
■ぜい性材料
- 焼き入れしたままの炭素鋼
- 鋳鉄
- 超硬合金
- コンクリート
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- 参考文献:門間改三,大学基礎機械材料,実教出版(株)