金型は、プラスチック成形をするための精密機械ですが、その機能を維持するためには適切な強度を確保しておくことが必要になります。また、金型を取り付けたり、取り外したりする作業においては重量物になりますので、移動時に自重で変形したり破壊したりという突発的なトラブルによって人身事故が発生しないように十分な強度を確保していなければなりません。
そのためには、経験と勘による強度確保のみでは不十分であり、材料力学を基礎とした強度計算を応用して金型を設計することが重要です。
プラスチック射出成形金型の設計では、以下に挙げる材料力学的試験のデータを活用することが必要です。
■静的強度試験
- 引張試験
- 曲げ試験
- せん断試験
- 圧縮試験
- 座屈試験
- ねじり試験
■動的強度試験
- 衝撃試験
ーシャルピー衝撃試験
ーアイゾット衝撃試験 - 疲れ試験
■工業的試験
- クリープ試験
- 磨耗試験 など。
力学計算は、技術的に確立された経験式を採用すべきであり、計算結果に対しては所定の安全率を見込む必要があります。
また、当然のことですが計算結果は「技術者の倫理」を遵守し、善良な意思の下に判断を下す必要があります。
破損事故の防止や安全確保は、設計技術者の判断にかかっていますので、コスト重視の設計に偏重してしまい、最も重要な判断を鈍らせることがないように、自分を常に律する心構えを、日本の金型設計技術者には抱き続けて頂きたいと願っています。