エジェクタピンには、溶融したプラスチックがキャビティ内に充填される際に、ピンの先端部に圧力が作用します。
エジェクタピン自体は、細長いピン形状をしていますので、このような形状の端部に強い圧縮荷重が作用しますと、ピンの途中から曲がったり、破壊したりする「座屈(ざくつ)、buckling」という現象が発生する可能性があります。
エジェクタピンのような形状の座屈に関しては、強度計算を行う経験式がいくつか提唱されています。
その代表例としては、「オイラーの式」(Euler's formula)があります。
オイラーの式は、下記のようになっています。
- P
- =nπ2AE(K/L)2
- P:座屈荷重(kgf)
- L:ピン全長(mm)
- π:円周率=3.1415…
- ※その他の変数は、【表】を参照してください。
オイラーの式で計算された座屈荷重Pが作用すると、ピンは座屈する危険があります。
したがって、エジェクタピンの先端に作用する溶融樹脂による圧縮荷重によって、座屈しないピンの直径と長さであることを、金型設計の段階で検証をしておく必要があります。
ここで、オイラーの式を使用する場合に留意しなければならない事項として「安全率」の考え方があります。
安全率Sは、
安全率S=基準強さ/許容応力
で表現される係数です。実際の金型設計では、材料のばらつき、熱処理の影響、機械加工精度、表面粗さ、使用中の摩耗や腐食、荷重見積もりの不確かさ、熱膨張、疲労、衝撃荷重などによって、計算の前提が不確かになるリスクを考慮する必要があります。
そのような場合に安全率を考慮して計算をします。
安全率は、各企業によってそれぞれ決めていますので、JISやISOで推奨する値はありません。