プラスチック成形金型では樹脂から発生するガスや腐食成分、大気中の水分が結露することによる金型部品表面の錆びや腐食に対抗するために、耐食性の良好な鋼材を採用する必要がある場合もあります。
耐食性の良好な鋼種の代表としてはステンレス鋼があります。ステンレス鋼は、クロムが成分として13%程度以上含まれている鋼材で、表面に錆びにくい皮膜を形成することが広く知られています。
プラスチック金型用途では、以下のステンレス鋼が多用されています。
(1)13Cr系ステンレス鋼
13%のCrを含有するステンレス鋼で、マルテンサイト系ステンレスに属します。JISではSUS420J2が代表的な規格になっています。
耐食性が良好で、加えてじん性が良好で鏡面性にも優れています。切削加工性も比較的良好です。硬さは33HRC程度です。
コアピン類、キャビティに使用されます。
モールドベース部材に使用される場合もあります。
(2)17Cr−4Ni系ステンレス鋼
17%のCr、6%のNiを含むステンレス鋼です。プリハードン鋼として使用されるケースが多い鋼種です。JISではSUS630が代表的な規格になっています。
硬さは35HRC程度です。熱処理によって52HRC程度まで硬度を上げることができる鋼種もあります。
ステンレス鋼は耐食性向上の他に、じん性改善の目的で細いコアピンに使用される例も多いです。ステンレス鋼の鋼種は、民間鋼材メーカーが各種のブランド名で販売をしていますので、特性を理解して採用することがポイントになります。