プラスチック射出成形金型は、金型の温度を20〜200℃ぐらいの温度範囲に保つことが必要なので、常温とは温度差が生じますから、金型の部品は熱膨張(場合によっては熱収縮)することになります。
金型の組立て調整は、常温で恒温室でなされるのが一般的ですので、実際の射出成形加工では温度領域が異なることになります。
金型の部品はそれぞれが独特の形状をしており、それらが複数複雑に組み合わされて、摺動や摩擦運動を行っています。
熱膨張の状態も極めて複雑で、理論で予測することは至難の業です。
熱膨張の問題は、経験的にノウハウを活用することがしばしば実務的手法として活用されています。
給油方法を工夫したり、接触面積を低減させたり、逃げを設けて変形量を吸収させる工夫もなされます。
また、温度調節機能を組み合わせて、熱の偏りをバランスさせる工夫をしたりもします。
ヒーターやマニホールドの周辺に冷却水路を設けたり、空気断熱層を設けたり、断熱板の工夫をする場合もあります。
摺動部品には、位置決め用レールを配置したりもします。
潤滑が困難な部分にはボールベアリングを採用したり、無給油合金を使うこともあります。
モールドベースの熱蓄積をバランスさせるために、不要部分の余肉を除去したりする工夫もあります。
ホットランナー関連では、熱量の収支バランスを十分に計算して検討することが特に重要です。チップ部分、マニホールド部分等固定側の熱容量と可動側の熱容量のバランスも、よく考えておく必要があります。
成形機のプラテンから放熱される熱量も考慮することが必要です。