ホットランナーは、成形材料のスクラップを発生させない射出成形技術として多用されるようになってきているが、コールドランナー金型とは異なり、金型に加わる熱の出入りについては極めて精密に温度制御が必要になる。金型の部材の熱の出入りを支配するのは、熱の伝わり方である。熱の伝わり方には以下の3つの形態がある。
1.熱伝導(heat conduction)
例)金属どうしで熱が伝導する現象
2.熱対流(heat convection)
例)金属から空気へ熱が対流して伝わる現象
3.熱輻射(heta radiation)
例)金属表面の色や光沢から輻射熱が伝わる現象
ホットランナーの設計では、上記1~3の熱の伝わり方を巧みに組み合わせるノウハウと科学的な知見が重要です。
熱伝導では、ホットランナーを構成するランナー本体やヒーター、加熱チップなどの材質を金属素材の熱伝導率を考慮して選定する必要があります。
金属の熱伝導率を以下に示します。
濃青 | 熱伝導率(kcal/m・hr・℃) |
ステンレス鋼 | 22 |
SKD61 | 29 |
炭素鋼(S55C) | 46 |
クロム鋼(1%Cr) | 52 |
アルミニウム青銅 | 70 |
亜鉛合金(4%Al,3%Cu) | 94 |
ベリリウム銅 | 104 |
純銅 | 332 |
このデータより、熱の伝導は、純銅やベリリウム銅が大変優れていることがわかります。
一方、セラミックなどの熱伝導の悪い素材を用いて、熱の伝導を防ぐことも行います。
また、熱対流では、空気による熱の遮断効率は大変高いものがあります。金型の保温では、空気を活用し、ホットランナーの金属部品どうしを接触させないようにクリアランスを意図的に設けます。
熱の保温すべき箇所と放熱すべき箇所を見極めて、熱設計することが重要です。熱が蓄積することによって部品の熱膨張も当然に発生します。