射出成形加工では、溶けたプラスチック材料が、ランナー(流路)の中を流動してゲートを通過してキャビティまで到達します。この一連の流動の過程において、圧力は徐々に損失されていきます。
溶けたプラスチックは粘性流体という流体に属し、ある粘度を持った流体です。しかも粘度はプラスチックの温度によって変動し、樹脂温度がある一定の範囲よりも低下してしまうと流動できずに固化が始まってしまうという独特の特徴を有しています。
さて、粘性流体が流路を流れる場合には必ず圧力損失が発生します。これは水や油の流動でも同様です。では、どのような場合に圧力損失が大きく発生するのでしょうか。圧力損失が発生しやすい条件は以下のような場所であることが知られています。
1. 流路の入り口付近
流体が流入する入り口付近では渦が発生し、損失が発生します。
入り口コーナー部のRの大きさによって損失を低減させることができます。
2. 流路が曲がる場所
流路が角度で曲がる部分では、流体が収縮した後に膨張したりする変化が発生するので、これが原因となって圧力損失が発生します。
3. 屈曲や湾曲が発生する場所
屈曲や湾曲する部分では渦が発生し、これによる圧力損失が発生します。
4. 流路の拡大や縮小が発生する場所
流路の断面が拡がったり、縮小する場所では渦が発生し、これによる圧力損失が発生します。特に急激な流路の拡大、縮小は大きな圧力損失を生じますので厳に避ける必要があります。
圧力損失の予測は、CAEによってもその傾向を知ることができるようになりましたが、実際の射出成形で必要となる緻密な流動状態を最適化するためには理論による考え方を考慮して、微調整の試行錯誤によって獲得されたノウハウを活用することが重要です。