ピンポイントゲート構造で問題となる点としては、下記のような内容が挙げられます。
- 1)
- ゲート先端部が成形品の表面に突起として残存してしまう、あるいは成形品の一部をむしり取ってしまう。
- 2)
- 充填圧力や保圧が高い割には、充填がスムーズに運ばない。
このような問題は、ピンポイントゲートを採用する度に金型設計者が悩まなくてはならない課題となっています。
以下に、これらを解決するための技術的な手段について解説します。
【図1】は、一般的なピンポイントゲート構造を示しています。何の配慮もしていないゲートデザインではこのような形状をしています。
一方、【図2】には、上記問題点を解決するための工夫が施されたデザインとなっています。
■ポイント1.ゲートランド長さ L
ゲートランドが必要以上に長いと、ゲート部の切断の際に、途中で切断して突起として残ってしまう可能性があります。
ゲートランド長さLは、ゲート先端直径dの1〜2倍程度の範囲とするのが経験則として推奨されます。
■ポイント2.ゲート開口角度 A
ゲートには、開口角度としてテーパーを設け円錐状とします。円錐状となっていれば、ゲート切断の際には、必ず最小断面部であるゲートと成形品の接点部で切断される可能性が高くなります。
また、離型もしやすくなります。Aの値は、15〜30°ぐらいが一般的です。大きな数値の方が切断は確実になりますが、先端部の摩耗が早く進む傾向にあります。
■ポイント3.肉盗み
ゲートを落とす成形品の面を肉盗みにより一段、成形品に食い込ませると、仮に切断部に突起が残存しても、成形品の表面からは出張らないで済みます。
肉盗みを設けるためには、成形品設計者の仕様変更の許諾を、必ず図面上で得ておく必要があります。
■ポイント4.ディンプル(湯溜まり)
ディンプルは、肉盗みを設けた際に、溶融樹脂が安定して流動できるように、成形品の一般肉厚と同じ程度となるようゲートと反対側に設ける球面状の凹みです。
ディンプルも成形品設計者の仕様変更の許諾を必ず図面上で得ておく必要があります。
以上のようなデザイン上の配慮をし、かつ放電加工等により精密に機械加工されたゲートであれば、上述したトラブルからはかなりの高い確率で解放されるでしょう。