生産ショット数の多い金型では、エジェクタピン穴が磨耗し、成形品にバリが発生することがあります。
バリの修正のためには、金型の可動側コアの入れ子修正や、新規製作による交換が主に採用される方法ですが、いずれも多大な時間と修正コストが必要になります。
このように、あらかじめショット数が大きく見込まれる金型では、エジェクタピン部の摩耗を見越して、メンテナンスが速やかにできる金型構造が推奨されます。
ミスミでは、かかるニーズに対応して、「エジェクタピン用ブシュ」を商品化しております。
ブシュを可動側コアにインサートし、摩耗が生じた際に標準品と交換するだけで、バリ修正を完了させることが可能です。
ブシュ材質は、現在のところSKD61を採用し、表面を窒化処理しています。
したがいまして、エジェクタピンにSKH51(硬度58〜60HRC)を採用した場合には、硬度の低いブシュ側が硬度差により先に磨耗させることができ、ピンはそのまま使用し、ブシュのみの交換を考慮すれば良いことになります。
特に、メインコアの材質がプリハードン鋼やS50C等の硬度が低い材質の場合には、コアに直接エジェクタピン穴を機械加工した場合には、穴の摩耗修正は甚大なリスクを背負うことになります。このような場合には、本部品が大いにその効果を発揮することになるでしょう。
日本では、金型の製作コストにのみ、注目が集まってしまう傾向がありますが、欧米ではメンテナンスコストも考慮し、このようなブシュ構造を多用しています。また、精密金型メーカーでは、自社規格で類似のブシュを採用している例もあるようです。
ブシュ採用の基準ショット数は、成形材料、成形条件、コア材質などにより左右されますので、メンテナンス状況をよく観察し、検討し決定基準を作られると良いでしょう。