生産工場では、空気圧エネルギーは無償(タダ)のように受け止められがちで、そのために空気圧システムの配管設置は意外に手抜きの状態にあるようです。しかし空気圧配送管システムの設計の良し悪しにより、供給される空気質や空気圧力ロスなどは大きな影響を受け、工場レベルでの機械類の稼動不安定に繋がることがあります。ここでは空気圧システムの配送管設計について、2回に分けて解説します。
(1)配送管の設計
(1)工場レベルやフロアー単位の配送管設計の基本
一般的工場でのフロアー単位用配送管には、下記の特徴を持つ「ループ方式」(【図1】参照)が採用されます。
■ループ方式配送管の特徴
- 細かい管でも工場内全域に均一圧力が供給できる。
- 一時的に空気を多量消費する場合でも、補助タンクにより圧力ロスなく最大出力が供給でき、周辺の空気圧システムへの悪影響が回避できる。
(2)主管と枝管の配管方法
(a)配送管における空気圧システムトラブルの要因
エアーコンプレッサから供給され圧送空気は膨張により湿気が凝縮し水滴を生じ易くなっています。この水滴とエアーコンプレッサからの油が配送管内で混合され乳濁液化し、この乳濁液が空気の流れに伴ない配送主管の底を流れます。この乳濁液は弁やシリンダなどの空気圧機器の機能低下をもたらします。
(b)配管方法のポイント
乳濁液が主管から枝管に入り込まず排除できる配管方法とすることがポイントです(【図2】参照)。
下記項目の配管方法により、空気圧機器への乳濁液の流入を防止することができます。
- 配送主管に空気の流れ方向に傾斜を持たせる(1mにつき1cm程度の傾斜)。
- 配送枝管は配送主管の上部に設ける。
- 低い箇所や配管末端部には排水用ユニットを取り付ける。
(c)配送枝管と空気圧機器との接続のポイント
圧送空気中には、乳濁液以外にも錆、金ごけ、その他の不純物が配管内部にあります。このために、空気圧フィルター(空気式アクチュエータ用クリーンエアーシステムの解説)やルブリケーターを設置し、空気圧機器のしゅう動部における摩擦力の変動軽減や腐食を防ぐ必要があります。空気圧フィルターやルブリケーターの接続法のポイントは下記です。
- 空気圧機器とフィルター、ルブリケーターの設置距離は5m以内。
- 空気圧による配管からの予期せぬ力が空気圧機器に作用しないように、配送枝管は独立して固定させる。
- 振動を生じる配管状態の場合は、鋼管や銅管は避け、ゴムホース・ナイロンチューブなどの弾性チューブを使用し空気圧機器へのダメージを回避する。
- 継ぎ目の数を出来るだけ少なくし、配送管全体の信頼性を高める。