遠心力によるボールベアリングの破壊（失敗事例と軸受活用法）

ボールベアリングのトラブル事例（遠心力によるボールベアリングの破損）を説明する。 図1に示すCCC（Counter Current Chromatography：向流クロマトグラフィー）装置は溶液中に溶け込んだ微量の物質を遠心力により濃縮する機能を持つ。

図1.CCC装置の構造図

遠心力は図示する公転運動と自転運動により発生し、チューブ内を連続的に流れる処理液を濃縮する。公転軸受で支持され、自転軸受を搭載した回転板をベース板上に取り付けたモータによりタイミングベルトを用いて回転駆動する。この結果、回転板に搭載した自転軸受に支えられた回転ドラムに巻きつけたチューブに遠心力が発生することになる。回転ドラムの自転運動は固定側の回転板の上方に配置した固定歯車に公転する自転回転軸の歯車の噛み合いで得られ、回転比は1:1となっている。本装置を運転したところ、80時間の運転で自転軸受が破損した。この濃縮装置の機構部の諸元値は下記の通りである。

（１）

回転数：1200ｒｐｍ（自転する回転体の重量：800ｇ）

（２）

自転ベアリング：6003ZZ（動定格荷重：6,000N）

（３）

公転ベアリング：6005ZZ（動定格荷重：10,100N）

（４）

自転軸、回転軸部品の材質：ステンレス

原因
破損した軸受は、外輪の内周部と玉の間にかじった跡が観察された。この破損は、軸受の外輪と転動体の間に発生した過大な力が原因で、次の２種類の力の発生によるものである。

公転運動する自転軸受に加わる外力

（1）

公転運動による自転する回転ドラムに発生する遠心力

（2）

自転ドラムの回転不釣合いによって発生する遠心力

対策の要点

以下の3点の対策を実施した図２に示す。

（1）

自転軸受の多数個化
上自転軸受:3個
下自転軸受:2個

（2）

軸受の動定格荷重のアップ
上自転軸受:6205ZZ（動定格荷重:1,400kg）
下自転軸受:6203ZZ（動定格荷重:960kg）

（3）

軸受の大口径化に伴う重量増加を軸受ホルダの薄肉化とステンレスからアルミニウムに変更により軽量化した。

対策後の軸受寿命の見積もり

①

上自転軸受：(1400 × 3/212)³ × 10⁶=7776 × 10⁶ 回転=108,000時間

②

下自転軸受：(960 × 2/83)³ × 10⁶=12379 × 10⁶ 回転=172,000時間

回転数1200rpmで、100,000時間以上の寿命と見積った。

図2.対策後の自転回転軸

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