ボールベアリングのトラブル事例(軸芯の不一致による外力によるボールベアリングの破損)を説明する。
図1に円板をウォーム と、ウォームホイールによる減速器を用いてDCモータで回転駆動する機構の正面図と平面図を示す。
図1.円板回転駆動構造図
DCモータの回転をカップリングを介して接続したウォームと噛み合うウォームホイールに伝え、ウォームホイールに取り付いた円板を回転する構造となっている。なお、ウォームとウォームホイールは、大減速機械要素部品として使用しており、その減速比は1:50に設定している。ウォームと、ウォームホイールは転がり運動を行う回転ボールベアリングを用いて、その両軸端を図示する構造で支持している。この構造で円板を回転駆動したところ、図2の断面構造のモータが停止する事故が発生した。
図2.モータ構造図
事故の状況は次の通りである。
- (1)
- モータの回転軸が回転不能な状態となった。
- (2)
- 図2に示すモータの出力軸に近い負荷側のボールベアリングが破損した。
- (3)
- ボールベアリングの破損の状況
-ボールベアリングの内輪はモータ回転軸に残存している。
-ボールベアリングを構成する他の部品である外輪、玉、リテーナは分解して飛散している。 - (4)
- この事項は複数回発生した。当初はモータの交換で対処したが、破損事故は2ヶ月後に再度発生した。
この事故は、モータ軸に許容荷重以上の過大な荷重が加わったために、ボールベアリング内のボールと接触するリテーナ間でオイル切れの潤滑不良状態が生じ、両部品の間で摩擦力が増大する金属同士の「かじり現象」が発生したためである。モータ出力軸に加わった荷重が、ロータを支えるベアリングを破損させたメカニズムは下記の通りである。
①ウォーム軸とモータ軸の回転中心の不一致が、カップリングの変形を引き起こし、カップリングの平行変位と回転変位のばね定数に相当する力が作用した。
②回転軸の不一致によるカップリングの偏心による回転不釣り合いによる遠心力が作用した。
両荷重を引き起こすカップリングのばね定数他は、次の通りである。
表1.荷重の種類とその内容
荷重の種類 | 内容 |
---|---|
カップリングのミスアライメント | カップリング方式:ヘリカルカップリング、材質:ステンレス 取り付け変位と荷重の関係 平行変位:156.9N/mm、回転変位:4.9N/deg |
カップリングの回転不釣合い | 定常回転の1800rpm、回転不釣合い2g・cmで0.69Nの遠心力 |
図3.DCモータの回転軸に加わる力
(1)カップリングのミスアライメント
●ミスアライメントによりボールベアリングに発生する力
並進力の釣合い:F1=F2+F3 ①
モーメント力の釣合い:F1・L1+F2・L2=F3・L3 ②
(回転中心は図3に示す重心位置とする)
F3を求める(①②式からF2を消去する)
F3 = {(L2+L3)/(L1+L2)}F1
F1の値はカップリングのミスアライメント量から決まる。すなわち、ミスアライメントの平行変位と回転変位の量によって、破損したボールベアリングに加わるラジアル方向の負荷荷重が決まる。
写真1.ヘリカルカップリング
●カップリングの遠心力によって発生する力
遠心力による発生力:F4=wρω2/g
- ω:
- 回転角速度(=2x円周率x回転数(rps))
回転数を定常回転の1800rpmとした場合回転角速度は188.5rad/s) - ρ:
- カップリングの偏芯量
カップリング回転中心:ウォーム軸とモータ軸の各中心の変位量
カップリング重心:カップリングの重量が集中していると考える仮想的な点 - W:
- カップリング重量
- G:
- 重力加速度(9.806m/s2)
カップリングの偏芯量はモータ軸とウォーム軸の偏芯量の半分の量と見積もる。
図4.カップリングの偏芯量(回転軸方向から見る)
図5.ウォーム軸とモータ軸の芯出し
●対策構造
ウォーム軸とモータ軸の回転の芯出しを行い、モータ軸に加わる荷重を低減した。
この芯出し構造は、モータを固定する「モータ取り付け台」とウォームを固定する「ハウジング」のベアリング穴の中心を一致させる設計とした。
参考とした資料
- ・
- 金友正文 「機械のトラブルシューティング解説55事例」(秀和システム)
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