プラスチック射出成形金型のキャビティ、コアを切削加工する方法として、高速ミーリング加工法があります。高速ミーリング加工では、主軸回転数50,000~75,000rpm程度の高速で刃物を回転させて、熱処理後の合金鋼などを精密に機械加工することができます。わが国の金型工作法の中でも主力の機械工作法に位置付けられます。
高速ミーリング加工を行うために、マシニングセンタが必要なことは当然ですが、切削工具も必要です。工具材質は、超硬合金やcBN焼結体(立方晶窒化硼素)を使用します。工具は硬度が極めて高いことが必要ですが、さらに高速回転しますので、回転による工具の振れを小さくしないと切削面の粗さや加工精度が大きく左右されてしまいます。
そこで、マシニングセンタ主軸と工具をつなぐツールホルダーの存在が大変重要になってきます。
ツールホルダーは、一般のミーリング加工では、コレットチャック方式を採用しています。
しかし、コレットチャックでは高速回転させた場合の振れが大きく15~20μm程度も振れてしまいます。
高速ミーリングの場合には、焼きばめホルダーを採用します。焼きばめホルダーとは、工具を取り付ける際に、ホルダーを誘導加熱によって300℃前後に加温して、熱膨張によって工具取り付け穴を拡大させ、工具を取り付けた後に冷却して、焼きばめによって工具を保持します。
焼きばめホルダーを用いた場合には、工具の振れは1~4μm程度まで小さく抑えることができ、加工面精度も加工寸法精度も著しく向上します。
超精密加工を行う場合には、振れ精度0.5μm以下とする技術も実用化されています。
焼きばめ工具の交換を自動化した工具交換システムも開発されています。
さらに、最先端企業では、マシニングセンタの主軸へ工具をダイレクトに焼きばめできる技術も実用化の領域に入ってきています。
高速ミーリング技術は、炭素鋼、合金工具鋼を焼き入れ後に精密加工することが可能な技術ですので、金型部品の工作費用をコストダウンさせることができるとともに、加工精度を向上させ、技術競争力を優位にする効果があります。
放電加工やワイヤーカット放電加工と比較すると加工速度は格段に向上しますので、納期短縮にも効果が得られます。
機械加工法では、工作機械の能力だけではなく、ツールホルダー、ツールのそれぞれが個性的な能力を有することは勿論ですが、それぞれが組み合わされて使用する際に最適な状態で能力を発揮できるようなシステム思考が求められてきます。部分最適ではなく、全体最適に至るようにケアされた技術でありますから多数の企業に賛同を得て急速な普及が進んだと言えましょう。