切削工具には硬くて、摩耗しにくい素材が材質として向いています。工具の材質は、加工物の材質や表面状態とも密接な関係があります。オールマイティな工具素材はありません、加工物との相性や加工品質によって適切に選定をする必要があります。
以下に主要な切削工具の材質を解説します。
【炭素工具鋼】
炭素工具鋼は、SKシリーズの工具鋼です。最も原始的な工具材質です。摩耗しやすく 金型の切削加工ではほとんど使われなくなりました。
【合金工具鋼】
SKS、SKDシリーズが該当します。炭素工具鋼にニッケルやクロム、モリブデン、タングステン等を含有させて、耐摩耗性を向上させています。焼き入れ前の鋼材の切削加工などに使用されます。
【高速度鋼】
SKHシリーズが該当します。タングステン、バナジウム、コバルトなどを含有させた素材です。エンドミルやドリル、バイトに使用されます。焼き入れ前の鋼材の切削に適しています。
【粉末高速度鋼】
高速度鋼の素材を、あらかじめ粉末状態として不純物を取り除いた後に真空溶解させて純度を高くした高速度鋼です。刃先の欠けがしにくくきれいな加工面が得られ、長寿命です。
【超硬合金】
炭化タングステンや炭化チタン、炭化タンタルを主成分とした素材をコバルトで焼結して作られる素材です。焼き入れ後の鋼材の加工やプリハードン鋼の切削に用いられます。
【サーメット】
炭化チタンをニッケル、モリブデンで焼結して作られる工具素材です。高速度鋼の10倍も早く加工することが可能です。
【セラミック】
酸化アルミニウムを焼結したもので、高硬度の素材を切削することができます。刃先がもろい弱点があります。焼き入れ後の鋼材の加工も可能です。
【cBN】
立方晶窒化硼素という素材で、自然界には存在しない物質です。アメリカ合衆国GE社が開発しました。ダイヤモンドに次ぐ硬さを持ち、焼き入れ鋼の精密切削に多用されています。
【焼結ダイヤモンド】
人工的に作られたダイヤモンドを焼結して作った工具素材です。高硬度材の加工に適しています。価格が高いです。
【単結晶ダイヤモンド】
天然に存在するダイヤモンドで、単結晶なので欠けにくく高硬度材の加工に最も向いています。しかし、宝飾的な価値があり、価格が極めて高価ですので滅多に使われません。