成形品の表面に人工的な凹凸模様やざらざらを設けるために「しぼ加工」は用いられます。
「しぼ加工」は、「梨地処理(なしぢ)」とか「エッチング処理」、「ブラスト処理」と同様にキャビティの表面に凹凸を彫り込みます。
しぼ加工や梨地処理、エッチング処理は、酸系の腐食液を鋼材の表面に管理された状態で接触させて浸食させます。
しぼ加工を行う場合には、下記の点に配慮することがノウハウです。
- (1)
- キャビティの表面は、できるだけ表面粗さを細かく磨いておきます。
また、磨きの程度もできるだけ均質となるようにします。
そうすれば、凹凸の浸食状態も均質になりやすくなります。
凹凸模様に差がありますと、人間の視力による感覚的な美観は、異質に見えてしまうことがあります。例えば、太陽光の下で見た美観と白色蛍光灯の下で見た美観は異なる場合もあります。 - (2)
- 鋼材は、できるだけ同一の鋼種とし、同一のロットから採取するようにします。
鋼材の種類が異なりますと、浸食状態が微妙に変わる場合があります。SKD11とプリハードン鋼、S55Cでは同じ浸食処理をしても凹凸の状態は微妙な差が現れる可能性があります。
また、同一の鋼種であっても材料のロットや材料の圧延方向に対する違いによっては、しぼ加工の出来上がり状態に差が出る危険性があります。
金型を多数個取りで作る場合や金型の製作場所が複数に渡る場合、金型を日本と他の国で同時に作る場合などのは上記のようなケースに遭遇する危険性が指摘されます。
しぼの状態がばらついてしまいますと、再度のしぼ加工を行うためには、キャビティ表面の再磨きが必要になり、莫大な時間をロスすることになってしまいます。 - (3)
- 放電加工面は特に丁寧に磨きます。
放電加工面は、表面に加工硬化層が現れますので、綿密に磨きを行うことが推奨されます。