プレス金型部品
- 金型を表すとき、下型は上から見た状態で表現します。製図法での平面図となります。上型は下型から外して、反転した状態で表現することが多いです。製図法での下面図となります。この上型の表現の仕方がいくつかあります。 【図1】は上型を前後に反転した状態の表現です。図は2面基準で表しています。X軸方向の寸法は変化しませんが、Y方向の寸法は前後が反転した状態となります。この状態は順送り加工用の金型であれば、材料の加工の推移と合っていますのでわかりやすい状態といえます。 【図2】は左右に上型を反転した状態の表現です。Y方向の寸法は変化しませんが、X軸方向の寸法が左右対称になっています。順送り金型では上型と下型の関係がわかりにくい状態といえます。タグ:
- 物を加工するには基準が必要です。基準を曖昧にすると加工しづらく、求める品質も得られないことがあります。プレス金型を構成するプレートでは、いくつかの基準の取り方があります。それぞれに特徴がありますが、統一した基準を持たないと加工現場が混乱したり、時には金型の組立に支障をきたすことになります。【図1】に加工基準の種類を示します。そして以下に特徴を示します。タグ:
- ダウエルピンは2本を使うことで部品の取り付け位置を決めます。2本のダウエルピンの関係は遠い方がよいです。【図1】を参照に説明します。プレートに加工される穴の位置は、常に加工誤差があると認識します。そうしますと、1点を基準にして考えたとき、加工誤差の大きさが同じと仮定して、もう1点の穴位置が近い場合と遠い場合を比較すると、近い方が誤差の影響が大きくでます。このことから、ダウエルピンの間隔は遠い位置にある方が精度的によいことになります。 また、2本のダウエルピンの位置が対象位置になっていると、反転して取り付けても入ってしまいます。取り付け間違いとなります。このようなことを防止するために、2本の穴位置は非対称とすることを心がけます。反転したときに組立できないようにしておくことを、フールプルーフ(バカよけ)と呼びます。タグ:
- ダウエルピンは、プレス金型部品の位置決めとして多用されています。一般的な使い方は、2部品に軽圧入して位置を決めます。ねじと同様に金型部品の大きさよって、ダウエルピン径を選択します。 【図1】は、プレートの厚さとダウエルピンの径の関係を示したものです。一般的にプレートの厚さと面積の関係は相対関係にあり、厚さに対して極端に大きな面積のプレートは使用しないだろうとの想定にたっています。タグ:
- 金型を設計していて、プレートへのねじの配置に悩むことがあります。ねじサイズを大きくしてねじの本数を少なくするか、ねじサイズを小さくしてねじの本数を多くするかといった問題がまずあります。この問題については「ねじの使い方-1(プレス金型構造設計の基礎 その1)」を参照して下さい。 ねじサイズを決めたとき、ねじの間隔をどのくらいにしたらよいかが気になります。 【図1】は、ねじサイズとねじ間隔の関係を示したものです。ねじサイズの10倍をイメージしています。ねじ間隔には明確な基準となるものがないので(厳密にはプレートのひずみの量や締結力などから考えなければいけないのでしょうが、現実的には難しいことが多いので、経験的な感覚で決めています。)、わかりやすい決め方としておいた方が、ねじのような部品では便利かと思います。タグ:
- 金型を構成する多くの部品はねじで締結され、構造が作られています。しかし、身近すぎるねじの使い方は意外と惑わせるものがあります。ここでは、プレートの厚さからのねじサイズの選択と端面からの寸法について解説します。 ボルトの締め付け力やトルクについては、ミスミ「プレス金型用標準部品」カタログの付録「技術データ」に掲載されていますから参考にして下さい。 ここでのねじは、六角穴付きボルトを想定しています。 【図1】はプレートの厚さとねじの関係を示したものです。一般的にプレートの厚さと面積には相対的な関係があり、厚さに対して極端に大きな面積のプレートは使用しないだろうとの想定にたっています。タグ:
- Q 押し出し加工について知りたい。 A 押し出し加工は、「据え込み加工とはどのような加工か(プレス加工と金型のQ&A Q21)」で示した据え込み加工と並ぶ、圧縮加工の代表的な加工方法です。 加工の内容を【図1】で説明します。圧縮加工される材料(ブロック状の材料、ビレットと呼ぶ)を遊びのないダイの中に入れ、パンチで加圧して成形します。 【図1】(a)は、パンチの加圧方向と同じ方向に材料が動き、ダイ穴で形状が作られます。このように押した方向と同じ方向に加工をする方法を前方押し出しと呼びます。断面の減少率は条件のよいもので80%程度とされています。ダイ径(D)との関係で示すと、D≦0.45dが目安となります。 【図1】(b)は、リング状の材料を押し出す方法もあることを示しました。タグ:
- Q 据え込み加工とはどのような加工か。 A 据え込みとは、機械用語辞典によると、材料を長さ方向に圧縮してその長さの一部または全部の断面を大きくする作業とか、材料に加えた加圧軸に直角の方向に材料がつぶされて動き、断面積を広げる加工との解説があります。【図1】に示すような加工が据え込み加工のイメージです。 【図1】(a)が基本で長さ方向に圧縮して長さを縮め、面積を大きくします。 【図1】(b)は部分的な潰しです。 【図1】(c)、(d)はアプセット加工(up setting)とも呼ばれています。型を使って圧縮して、材料の高さを縮め横に広げる加工です。端部をつぶす加工と中間をつぶす加工があります。端部をつぶしてボルトや釘、ピンの頭を作るのもは、頭を作ると言うことからでしょうかヘッディング(heading)または、頭部据え込み加工という特別な呼び方があります。タグ:
- Q 平面度を必要とする製品加工のよい方法はないか。 A いろいろな加工(形状を作るための抜きや曲げ、成形加工)を進めることで、【図1】に示すように面の平面度は悪くなります。それを改善して平らな面にすることが求められます。 改善策として、最も単純な方法は材料を平らな面を持ったパンチ、ダイで圧縮加工することです。しかし、この方法だけでは改善が難しいことが多いです。効果のある改善策としては【図2】に示すように、小さな多くの面(点)で材料をわずかに圧縮することです。平面同士で圧縮する方法より、小さな力で効果のある改善を行うことができます。タグ:
- Q 面付け加工をきれいに仕上げたい。 A 穴抜き加工した縁を【図1】に示すような面付け加工をすることが最近は増えています。皿ビスの座面やバリ取りを目的としたことからです。 面付けは材料をつぶすことから、【図2】に示すように、つぶされた材料は穴の周囲の膨らみとなって現れます。この膨らみは穴を歪ませると同時に穴径を減少させます。単にボルト等の軸が障害なく通ればよいものでは問題ないですが、穴精度を必要とするものでは、【図3】に示すように再穴抜きを行い面付けによって、歪んだ穴を仕上げます。タグ:
- Q 型材質の選び方を知りたい。 A 抜き型のパンチ、ダイを例として材質選定を考えてみます。パンチ、ダイに使われる材質を並べてみます。 プリハードン鋼(HPM)→炭素工具鋼(SK3)→特殊工具鋼(SKS3)→ダイス鋼(SKD11)→高速度鋼(ハイス鋼、SKH51)→超硬合金(V30) 金型にたずさわる人であれば、おおむねこのような並びとなると思います。鋼種は標準的と思えるものを記しています。タグ:
- Q カール加工で丸くならないが? A カール加工は材料の縁を小さく丸める加工です。そのときに【写真1】に示すように、丸めた一部が丸くならずに直線になってしまうことがあります。材料の縁の強度対策や安全対策であれば問題ないこともありますが、写真のようなヒンジではできるだけ軸の丸さに合っている方がよいです。また、カール部分は外から見える部分となることも多いので、外観的にもきれいな形が望ましいです。タグ:
- Q 絞り製品の置き割れ対策を知りたい。 A 置き割れ(時期割れ、シーズンクラックとも呼ばれる)は、【写真1】のように加工後しばらくして発生するたて割れです。加工直後に現れるものは比較的被害が小さくてすみますが、組立が完了して、商品となった後に発生すると惨めです。SUS304材や黄銅材によく見られます。 原因は厳しい加工によって材料が加工硬化して、脆性が増した状態に加工に伴う残留応力が作用して、破壊を起こします。材料に潜むマイクロクラックなどがきっかけを作ります。 対策としては、材料にかかる加工硬化の影響を小さいものにすることです。 具体的には、タグ:
- Q 絞りビードの使い方を知りたい。 A 【図1】は角絞りのイメージを示しています。角絞りを行うと直辺部のフランジは大きく引かれ、コーナー部の材料はあまり動きません。この流動のバランスを取らないとキャニング等のひずみの原因となります。流動バランスの取り方としては直辺部のダイRを小さくしたり、材料押さえの力を直辺部とコーナー部で変える等の方法がとられます。 このような対策で不十分なときに、絞りビードを使い強力に流動バランスを取ります。タグ:
- Q 絞り高さとプレス機械のストローク長さとの関係について知りたい。 A 加工とプレス機械のストローク長さの関係は、絞り加工のとき、最も注意しなければいけません。【図1】で説明します。 (a)は絞り落としという加工の状態を示しています。フランジのない製品の加工のとき成立します。絞り終わった製品をダイの下に落とします。この加工では図に示すように、ダイ寸法と製品高さの合計以上のストローク長さがあれば、絞り加工を行うことができます。絞り加工の中で、最も短いストローク長さで加工することができます。タグ:
- Q 円筒絞りでしわ押さえなしで絞りができるか。 A 円筒絞り加工の難易の目安は、絞り率と相対板厚(t/D×100)で判断されます。絞りが容易になるのは、絞り率と相対板厚の値が大きくなるとよいのです(大きくなりすぎるのも問題がありますが)。この2つが条件を満たすと、絞り金型にしわ押さえが無くとも絞れるようになります。その条件を絞り率を基準に示すと、次のようになります。 絞り率0.5→相対板厚3.5%以上 絞り率0.6→相対板厚2.0%以上 絞り率0.7→相対板厚0.7%以上 このような条件であれば、【図1】に示すような簡単な金型構造で絞り加工ができます。図は絞り落とし構造です。フランジ付きの製品ではダイにノックアウトを入れ、排出できるようにします。パンチには付着防止のキッカー等の処置も必要となります。タグ:
- Q 薄い材料の絞り加工でしわが発生するが? A 絞り加工では製品形状から展開計算をして、ブランク(D)を決め、絞り率から絞り回数を決めていきますが、絞り加工の難易はこの段階では分かりません。加工の難易はブランク(D)と材料板厚(t)との関係から推定します。 これを相対板厚と呼んで、次のように計算します。 相対板厚=t/D×100(%) この計算結果は0.1〜2.0の範囲にでることが多く、数値が小さい方が絞りは難しくなります。【図1】でその状態を説明すると、ブランク(D)は周長を縮めながら絞られていきます。このときに相対板厚が小さいほど、円周方向に働く圧縮力の影響によって、しわがでやすくなります。しわの発生を押さえるためには、板厚方向に圧縮力を働かせます。この力をしわ押さえ力と呼びますが、薄い材料では押さえすぎると材料が切れてしまいます。このように相対板厚が小さいときの絞り加工は、微妙な変化でしわが発生したり割れが発生します。タグ:
- Q 抜き製品からクリアランスを知る方法は無いか。 A 金型製作に際して、製品サンプルがあり、その抜け状態にあわせて製品を作りたいようなときに、製品からクリアランスを知りたいと思うことは時々あります。一般的には切り口面を観察してせん断面長さ等から推定する方法がとられますが、クリアランスの値は推定となります。 【図1】はせん断部分の拡大図です。ダイ上の材料とパンチ下の材料の断面に注目すると、それぞれのせん断面がパンチ、ダイの側面に接しています。分離されたバリの部分は、やはりパンチ、ダイに接しています。この状態が理解できていれば、【図2】に示すように、せん断面とバリの付け根部分の寸法を測定することで、数値を掴むことができます。しかし、パンチ、ダイの切れ刃部が摩耗している場合、バリの付け根は丸みを持った形状となっていることもあります。この時には摩耗状態を推定して、形状を決め測定することになります。このようにして得られた数値と、切り口面の状態からの推定とをあわせて判断するとよいでしょう。タグ:
- Q 抜き型のダイの逃がしはなぜ必要か。考え方は? A 抜き型の状態を【図1】に示します。この図で説明します。 抜きダイはパンチ形状に合わせた穴が加工されますが、加工力を受けるので破損しない強さが必要です。その部分が図にSで示したところです。この部分は刃先が痛むと研削(再研削)します。そのためにある程度S部が薄くなっても耐えられるように設計します。設計の考え方で、再研削部分を長くしておけば金型の総寿命が延びる、と考えてS部を長くする人がいます。これはダメでよい結果は得られません。 抜かれてダイの中に入った製品は、ダイの側面と接しながら押し下げられて行きます。このダイ部分をストレートランドと呼んでいます。ストレートランドが長いと、製品は押し下げられる過程でわん曲が増加します。ときには製品とストレートランド部が焼き付きます。金型寿命を長くしたいと考えて設計すると、このようになりうまくいきません。ストレートランドにある製品は、せいぜい3〜4枚程度とします。この程度とした方が金型寿命もよいようです。タグ:
- Q 抜き加工力の軽減策として、シヤー角があるがどのように使えばよいのかを知りたい。 A 通常の抜き加工では、パンチ、ダイともに平らに作るので、抜き輪郭形状全体が同時に力を受けます。そのときの加工力(P)の計算式は次のようになります。タグ: