(15)粉体塗料
粉体塗料は、熱可塑性または熱硬化性樹脂に顔料、充填剤、硬化剤、可塑剤などを加えて微粉末にした合成樹脂組成物であります。
熱可塑性粉体塗料用樹脂としては、塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン)、ポリアミド(ナイロン)、セルローズエステル(CAB)、フッ素樹脂などがあります。これらの塗膜形成は、粉体粒子の熱融着によります。
熱硬化性粉体塗料の樹脂は、エポキシ、アクリル、ポリエステル樹脂などが使われます。なかでもエポキシ樹脂粉体塗料が大量に生産されています。これらの樹脂は焼け付く前までは低分子量でありますが、可熱融着すると、塗料中の硬化剤によって橋かけ反応が開始され、高分子化されます。
粉体塗装の特徴をあげると次のとおりです。
[1] 無溶剤形塗料で、大気汚染の心配がない。粉末状のため回収再利用が可能。[2] 一回塗りで厚膜が得られる。[3] 作業が自動化、高度な塗膜管理ができ、製品の長寿命化可能。[4] 作業が安全、火災の心配がない。
高温焼付け(160〜200℃)を必要とするので、200℃の焼き付け可能なものに限られます。耐久性、耐候性、耐食性、肉持ち感を要求されるものには大きなメリットがあります。
(16)ハイソリッド塗料
従来からの溶液形塗料と基本的には同じですが、作業性や塗膜性能をそこなうことなく溶剤量を減じ、固形分を多くした塗料を総称してハイソリッド塗料といいます。通常塗料中の固形分75%以上、塗装時の固形分70%以上のものを指します。
塗膜主要素は、従来塗料と同種類でありますが、樹脂自体を低粘度にし、低粘度の硬化剤あるいは共反応樹脂を使用しています。いくつかの塗料を紹介します。
(1)アクリルまたはポリエステル系ハイソリッド焼付け塗料
低粘度樹脂を使用した1液形塗料で、自動車、電気機器、金属家具などに使われます。
(2)エポキシ系ハイソリッド塗料
変性エポキシ樹脂塗料は、エポキシ樹脂の一部をコールタールピッチ、フェノール樹脂、その他の非反応性可塑剤や樹脂で変性した塗料です。代表はタールエポキシ樹脂塗料で、純エポキシ樹脂塗料に較べて有機溶剤量が少なく安価で防食性に優れています。船舶、鋼構造物、化学工場設備などの防食、耐薬品塗装に用いられます。
(3)ウレタン系ハイソリッド塗料
低粘度ポリオールとポリイソシアネート化合物を用いてハイソリッド化した塗料で、硬化剤には脂肪族イソシアネートを使用します。用途はエポキシ系ハイソリッド塗料と同じで船舶用、化学工場設備用などです。
(4)無機質塗料
アルキルシリケートまたはアルカリシリケートをバインダーとして用いたもので、亜鉛末と組み合わせたジンクリッチペイントが有名です。耐薬品、耐食用に用いられます。