電磁波シールドは、電波の伝達経路を遮断して、ほぼ100%反射することにより外部への漏れ、外部からの侵入を防ごうとするものであり、最も有効な電磁波シールド材は金属であります。これに対して電波吸収材は、侵入してくる電波を吸収して、熱エネルギーなどに変換して消滅させてしまうものです。
電波吸収材には、吸収様式から、透過減衰量の大きい吸収型と、金属面と吸収材との間の多重反射を利用する整合型に分けられます。
電波吸収材のもつ機能は、[1] 抵抗体のオーム損失を利用するもの、[2] 誘電体の誘電的損失を利用するもの、[3] 磁性体の磁気的損失を利用するもの、[4] これらの組み合わせなどがあります。
[1] は吸収型で、金属粉末やカーボン粉末を適当な媒質の中に分散させたもので、電波暗室などへの適用が期待されますが、なにぶんにも、十分な吸収能をもつためには、少なくとも1/4波長以上の厚さが必要となりますのが欠点です。
[3] の整合型は、裏打ち金属板により定在波を立たせ、金属板直前にできる磁界の強い場所に磁性材料を設置し、減衰させるものです。
[3] の吸収型もあります。透過電波を磁性損失により吸収するもので、磁性体としては、カーボニル鉄、特殊フェライト磁性粉などが利用されています。
フェライト電波吸収材には、1層型電波吸収塗料と2層型広帯域電波吸収塗料があります。1層型は、フェライト粉末とカーボンブラックや金属粉末を樹脂に混合・分散したものを金属表面に塗装して電波を吸収するものです。船舶レーダー用に用いられています。
2層型電波吸収塗料は、【図1】に示すように、金属板上の電磁エネルギーを吸収する吸収層と変成層の2層構造をもっており、広帯域の電磁波に対応しています。吸収層はエポキシ、フェライト、黄銅繊維により構成することにより1.3mm前後の膜厚で十分な性能が得られています。変成層は、塗膜の機械的物性、透過阻止能などの性能を向上させるために、フェライト以外に珪酸塩系の無機顔料粉末を使用します。これらの配合比を変えることにより広帯域吸収特性を変えることができます。 |