塗装
塗装は、いままでご紹介してきた表面処理法のなかでは最も古い歴史をもつものでしょう。塗装は塗料を使って物体表面に美観を与え、物体を保護する目的で、有史以前から行われていたといわれています。
エジプトのミイラや古墳から発見された矢尻に漆が使われています。勿論これらに使われた塗料は天然物である天然樹脂、乾性油、生うるし、動物性蛋白質などでありました。それに岩石などの色彩をもつ粉末を加えて塗料にしていたのです。
現在使用している塗料の概念に近い、溶剤で希釈するようになったのは18世紀からで、我が国では、明治初年に洋式ペイント(油ペイント)が輸入され、やがて漆や渋に替わってそれらの生産がはじまったといわれています。
現在では、日常生活に必要な建築機材、家電製品、日用品などのほか、大型構築物、輸送機関、建材、電気、通信、農林水産関係など、あらゆる面で、木工品、鉄鋼製品、非鉄金属製品、プラスチックスなどに塗装されています。
塗装の目的
塗装は、塗装しようとする製品の表面に、有機質の塗膜を形成させ、それによって次のような目的を達しようとするものです。
(1)化学的保護作用
製品の表面に強固に付着形成した塗膜によって、外界の水分、酸素、硫黄、電解質などの腐食環境を遮断して、錆びの発生、腐食などから製品を保護します。
(2)力学的効果
塗膜によって外力からの損傷の防止、摩耗の防止、摩擦係数を小さくして滑り易くする。また逆に摩擦抵抗を増して、滑り難くするなど。
(3)外観的価値向上
塗装をすることによって、製品のもつ本来の外観とは異なった視覚的効果を与え、芸術的価値や商品価値を高めます。
(4)機能付与
最近では、上記のほかに、塗膜のもつ生物への忌避作用により、生物や水生植物の付着防止(船底塗料、殺虫塗料など)。電気的・熱的・力学的性質などを利用する導電性塗料、電気絶縁塗料、指温塗料、防火塗料、遮音塗料など、製品にある種の機能を付与する機能性塗装の開発が盛んです。