塗膜を形成させるためには、塗料が必要です。塗料については後に詳しくご紹介しますが、塗料は一般に流動体の液体でありますから、この性質を利用して塗装しようとする面(以下、被塗面といいます)に塗りつけます。塗りつける方法はいろいろあります。
期待される性能をもつ塗膜を形成させるためには、他の表面処理と同様に、塗膜と被塗面との間に、油、ごみ、さびなどの異物が介在してはならず、塗装の前には前処理が必要です。また、塗膜が素地と強固に付着するためには、素地表面の性質に応じて塗膜構成要素であるポリマーが配向することが必要です。そのためには分子の運動が自由である液状が有利です。ですから今日用いられている塗料の大部分は液体です。
塗装工程のあらましは、次のとおりです。
(1)前処理
被塗面の油、ごみ、さび、異物などを除き、表面を清浄にします。脱脂、酸洗いがこれに該当します。また要望に応じて、バフ研磨・サンブラストなどの機械的研磨や、塗膜の密着性や耐食性を高めるためのリン酸塩処理などの化成処理が行われます。
(2)塗料の調合
塗料をその塗装に用いられる塗りつけ方法に適した流動性をもつように調整する。また、目的の色に仕上がるように色調整を行います。多液形塗料であれば主剤・硬化剤・促進剤などをそれぞれに適合した割合で調整する。
(3)塗料を被塗面に塗りつける
刷毛塗り、吹き付け、エアレススプレー、ホットスプレー、静電塗装、電着塗装などの方法が用いられています。
(4)塗膜の乾燥
塗料を塗膜に硬化させます。流動性のある塗料の膜が、粘弾性の固体に変化することを乾燥といいます。ゾルからゲルへの変化であります。塗料が乾燥する機構は、塗料の種類や組成によって異なりますが、冷却固化、蒸発乾燥、酸化乾燥、重合乾燥、融合乾燥、これらの組み合わせがあります。
(5)後処理
必要に応じて、乾燥した塗膜の後処理として、サーフェーサー(下塗り)の表面を研磨します。
(6)重ね塗り
目的に応じて、この上に何回か塗料を塗り重ねます。下塗り、中塗り、上塗りなどです。