窒化とは、窒素を拡散浸透させて硬質の窒化物を生成させることで、アンモニアガスによる方法が最初に開発されました。窒化の主な目的は耐摩耗性の向上ですが、軟窒化は耐疲労性の向上を目的にしています。浸硫窒化は、耐焼付け性の向上を目的にしています。
窒化や軟窒化は、鋼の変態点以下の温度で処理されるため、変態点以上で行われる浸炭焼入れよりも熱による変形が少ないことが特徴です。また窒化物の生成による硬化であるため、適用材料が広いことも特徴の一つであります。チタン合金などにも適用できます。
窒化処理の方法を、【表1】に示します。
【表1】窒化処理の種類
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(1)ガス窒化
最初に開発された方法で、単純にアンモニアガス中で加熱するものです。アンモニアは加熱された鋼表面に接触して活性化した原子状の窒素と水素に分解され、この窒素が鋼中に拡散して、窒化物を生成して硬化します。
(2)プラズマ窒化(イオン窒化)
減圧した真空槽中に処理物を陰極、炉体を陽極にして、炉内に窒素と水素を導入して数100ボルトを印加すると陰極側でグロー放電を生じます。これによって+に帯電した窒素イオンと水素イオンは、陰極であるワークに衝突します。衝突によってワークは昇温し、窒化物を生成し内部に拡散します。
(3)ガス軟窒化
軟窒化は、窒素と同時に炭素を拡散浸透させる処理で、耐疲労性の向上を目的にしています。尿素の分解ガスや窒素にアンモニアと、二酸化炭素を添加したものが用いられます。
(4)塩浴軟窒化
NaCNとKCNOの混合浴に、空気を吹き込む、ドイツのデグザ社の開発した「タフトライド」が有名です。
(5)浸硫窒化
耐摩耗性と摺動特性を付与する目的で、硫黄も同時に拡散浸透させるものです。