物を加工するには基準が必要です。基準を曖昧にすると加工しづらく、求める品質も得られないことがあります。プレス金型を構成するプレートでは、いくつかの基準の取り方があります。それぞれに特徴がありますが、統一した基準を持たないと加工現場が混乱したり、時には金型の組立に支障をきたすことになります。【図1】に加工基準の種類を示します。そして以下に特徴を示します。
【図1(a)】:2面基準。プレートの平行と直角を出し、その交点を原点として加工するものです。この原点を採用すると加工するプレートは基準となる2面の面研削と直角を出しておく必要があり、その精度がプレートの加工精度に影響します。
現在では、プレートの穴加工は機械の目盛りで読み取り、センター加工後、穴加工しますが、以前はこの2つの面を基準にけがきをして、穴のセンターを求め、センターポンチでセンターマークを打ち、穴加工していました。2面の直角度がそのまま穴位置に反映されていました。
【図1(b)】:1面・穴基準。プレートの1面で平行を出し、穴のセンターを原点として加工するものです。2面基準の直角出しの煩わしさを排除したものです。プレートに加工する穴の全てを工作機械のテーブル移動で読み取り、加工することを前提としている基準の取り方です。平行出しをする面は研削が必要です。研削は両端のみ行うこともあります。
【図1(c)】:2穴基準。2つの穴でプレートの平行を出し、片方の穴のセンターを原点として加工するものです。プレートの外周はどのような状態であってもかまいません。例えば溶断のままの面であってもよいのです。
【図1(d)】:2中心線基準。この基準の使い方は2通りあります。
けがきで座標位置を求めるやり方では、プレートの4面の直角出しが必要です。けがきでプレートのセンターと思われる位置に短い線をけがきます。次に反転(現場用語では「とんぼ」するという)して同じことを行います。その結果、短いけがき線が一致していれば、そこがセンターとなりますが、一致していないときには、2本の線のズレのセンターをねらって再度繰り返します。そしてセンターを求めます。90度回転して同じことを繰り返しX,Yの基準位置を求め、その交点を原点として穴位置を求め加工します。この方法では、プレートの幅と長さの誤差は両端に振り分けられます。
もう一つの方法は、2面の直角を出し、基準面から中心と思える位置(呼び寸法の1/2)に座標をずらし、基準位置とする方法でX、Yの2軸を決め、その交点を原点として加工します。
この基準の取り方は、単工程型に多く使われていた方法です。
【図1(e)】:1面と中心線基準。Y軸センターの求め方は2中心線基準と同じです。X軸の基準を端面としたものです。順送型では材料をプレート中心に置き、加工します。この基準の取り方は、材料の置き方と加工の推移にX方向の寸法推移が合っていることから、なじみやすく使われます。