6. 寿命
ボールねじの寿命とはボール転動面、あるいはボールのいずれかに繰返し応力による疲労のため剥離現象が生じ始めるまでの総回転数、時間、距離をいいます。ボールねじの寿命は基本動定格荷重から求めることができ、次式により計算できます。
6-1. 寿命時間(Lh)
寿命時間の計算例
- <使用条件>
- ・ボールねじ型式 BSS1520(φ15 リード5)
- ・軸方向平均荷重Pm 250N
- ・平均回転数 Nm 2118(min-1)
- ・運転係数fw 1.2
- <計算内容>
- BSS1520の基本動定格荷重Cは4400Nですので、
- よって、寿命時間は24824時間となります。
6-2. 軸方向荷重
ねじ軸にかかる軸方向荷重は、加速時、定速時、減速時などの各運転パターンにより異なり、次式により計算できます。
- 軸方向荷重の計算式
- 定速時・・・軸方向荷重(Pb)=μWg
- 加速時・・・軸方向荷重(Pa)=Wα+μWg
- 減速時・・・軸方向荷重(Pc)=Wα-μWg
* 垂直取付の場合は「μ」を除いて計算してください。
- μ:直動案内摩擦係数0.02
- W :移動体質量N
- g :重力加速度9.8m/s2
- α:加速度 (*)
(*) 加速度(α)=(Vmax/t)×10-3
Vmax:早送り速度mm/s
t:加減速時間s
6-3. 軸方向平均荷重と平均回転数の計算式
軸方向平均荷重と平均回転数は各運転パターンの運転時間の割合により算出されます。
表1.のような運転パターンの場合は、式2により軸方向平均荷重と平均回転数を算出できます。
軸方向平均荷重と平均回転数の計算例
- <使用条件>
-
運転パターン 軸方向荷重 回転数 時間割合 A 343N 1500min-1 29.4% B 10N 3000min-1 41.2% C 324N 1500min-1 29.4%
- <選定内容>
- ①軸方向平均荷重
- よって、軸方向平均荷重Pmは250Nとなります。
- ②平均回転数
- よって、平均回転数Nmは2118min-1となります。
7. ねじ軸の取付方法
ボールねじの代表的な取付方法を以下に示します。
取付方法 | 適用例 |
---|---|
・一般的な取付方法 ・中速回転~高速回転 ・中精度~高精度 ・サポートユニットは標準タイプBRW・BURを選定。 |
|
・中速回転 ・高精度 ・サポートユニットは標準タイプBRWを選定。 |
|
・低速回転 ・軸長が短い場合 ・中精度 ・サポートユニットはエコノミータイプBRWEを選定。 |
8. 温度と寿命
ボールねじを常時100℃以上で使用する場合または短時間でも非常な高温で使用する場合には材料の組織が変化し基本動定格荷重、基本静定格荷重が温度の上昇にしたがい減少します。
ただし100℃までの運転温度では影響を受けません。100℃以上で使用する場合の基本動定格荷重C”、基本静定格荷重Co”は温度係数をそれぞれft, ft'とすれば次式で示されます。
温度℃ | 100以下 | 125 | 150 | 175 | 200 | 225 | 250 | 350 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ft | 1.0 | 0.95 | 0.90 | 0.85 | 0.75 | 0.65 | 0.60 | 0.50 |
ft' | 1.0 | 0.93 | 0.85 | 0.78 | 0.65 | 0.52 | 0.46 | 0.35 |
通常時は-20~80℃以内でご使用ください。
高温の場合、耐熱用グリースの変更や構成部品の耐熱温度等の確認が必要になります。
9. 剛性
装置の位置決め精度、制御時の応答性などを向上させるためには送りねじ系各要素の剛性を考慮する必要があります。送りねじ系の剛性(K)は次式で示されます。
ねじ軸に軸方向外部荷重が加わった場合の軸方向の伸びと縮みは次式で示され ます。この軸方向の伸び縮みは直接ボールねじのバックラッシとして現れます。