ここでボールねじ選定の算出に大きく関わる条件として、
1. | ワークとテーブルの質量(m)(駆動体の質量) | |
2. | 早送り速度 | |
3. | 時定数 |
があります。ここで2. 3.は、加速度の大きさ(α)を決めるものです。
したがって、ボールねじ選定には、駆動体の質量(m)とその加速度(α)が関係してくることが分かります。
即ち、運動方程式(ニュートンの第二法則):F=m x αで生じる直進運動による力(F)に対して、適切なボールねじを選定することに繋がっています。
さらに、駆動開始時と停止時には、駆動体には慣性モーメント(回転運動における質量(m)に相当:慣性モーメントについて(動きを持つ構造設計-7)参照)が働きます。
LCA(ローコストオートメーション)の設計者は、機械全体を設計する段階で、駆動体(m)をいかに軽く出来るか、また、加速度(α)をどこまで小さくできるかが腕の見せ所で、ボールねじ選定の自由度を与えるものです。
ボールねじ選定に関する技術用語の解説
■許容回転数:DN値
鋼球中心径D(mm)と軸回転数N(rpm)の積で規制される。通常はDN値≦50000〜70000
■危険速度
軸の角速度が軸系の曲げ固有振動数と一致すると共振現象(振動が増大してくる)を起こし、振れまわり運動が大きくなる。そのため軸が曲げ変形を生じることとなる。この現象を生じる軸の回転数を危険速度と呼ぶ。
■(送りねじ系の)剛性
剛性とは、ばね定数と同じ単位の次元で表される。したがって同じ意味合いで解釈できる。機構系全体をばね系と考えたときの荷重(P)に対する変形量(△)は比例関係となり、この比例定数の逆数を剛性と呼ぶ。
前述の機構系をスプリングとした場合、フックの法則と呼ばれるもので、その比例定数は弾性係数である。
■時定数
制御入力がONになったタイミングから目標の制御状態(カタログの説明ではモータの早送り速度)にまで達するまでの時間的な尺度で、立ち上がり時間の目安となる数値。時定数が小さいとは、短時間に目標速度に到達させる制御を意味する。即ち、制御上では加速度を大きくする必要がある。